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「っ…てんめぇぇぇっ!!フザケンなあぁぁぁぁぁっっっ!!」
ガッシャアァンッ!!
怒り狂った一人の魔導士によって、城は一瞬にして消し飛ばされた。
美しい顔立ちの青年の瞳と白銀の髪が怒りで震えている。
「いや、ごめんっ!!まさかそんな大事なモノとは知らなくって…。」
黒髪でがっしりした身体の、だけどとても優しい顔立ちの青年が慌てて謝罪の言葉を告げる。
が、どうやら今の彼には届きそうにない。
「魔王が持ってた魔宝石だし、アレを壊せば威力が無くなると思って…」
「威力が無くなりゃイミねぇだろっ!!
俺はその魔宝石を奪うためにここまで来たんだぞっ!!あと少しで手に入るって時にっ…でなけりゃ誰がてめぇみたいな見ず知らずのお人好し勇者サマなんぞ助けてやるかっ!!」
「ごっ…ごめんっ…本当にっ…。
けどそれなら目的を先にちゃんと言っといてくれたらっ…」
ヒュオッ…
辺りが一瞬で冷気に包まれる。
「ほぉ…俺のせいだってのか…。いい度胸だ…俺の魔力はまだ残っているからな…調度良い、魔王と同じく消し炭にしてやるよ。安心しろ…勇者は魔王を倒すために勇敢に散ったと後世に伝えといてやる…。」
そう言いながら彼は本気で剣に魔力を集結させ、今にも勇者に向って振り降ろそうとする。
「まっ!?待って、待って!!ストップ、ストップ!!折角二人で協力して魔王を倒したってのにこんな終わり方は無いって!!えっと、そのっ、魔王の持ってた魔宝石と同じモノが手に入ればOKなのか!?」
「同じ物だと?アレはこの世界に1つしかないレアアイテムだぞ。アレ以上の物などこの世界には存在しない。」
剣の黒い闇の輝きが増してゆく。
「そ、そうなのか…で、それを手にしてどうするつもりだったんだ?まさか…魔王にでもなろうと…!?」
「バカか、そんなくだらないもん誰がなるか!俺はあらゆる魔導を己のモノとし最高位の魔導士となる者だ。この世界だけでなく別の世界の力をも手にする…が、てめぇはそれを阻んだってワケだっっ!!」
「わ、わかった!わかったからっ!!俺が何とかするからっ!取り敢えずソレ収めて!流石に君とは戦いたくないよ。魔王との戦いでダメージ受けてるのはお互い様だし、それに本気で戦えは君もタダじゃ済まないと思うよ。俺が強いってコトは君が一番わかっているだろ?」
ピクッ…
その台詞に、魔導士の手が少し緩む。
そう、力はほぼ互角。
そんな二人が戦えばお互いタダでは済まないどころか国一つ滅ぼしかねない。
「チッ…」
シュインッ…
怒りが収まったのか、冷静さを取り戻した魔導士の魔力は闇へ還っていった。
「…で、どう責任取ってくれんだ?」
「あ、えーと、確かーーーー」
勇者は腕時計から映し出されたヴィジョンを見ながら何かを確認しだした。
珍しいアイテムだ。
俺もこいつに会って初めて見たな。
いっそソレを代わりに頂くか。
「あった!あの魔法石と同じアイテム!!」
「何ッ!?」
「ここからそんなに遠くはないし、今なら十分行けるよ!どうする?」
「…ニセモノじゃねぇだろうな…。」
「大丈夫!ちゃんと解析したから!!」
「っーーーチッ…。」
どこまで信用できるかわからないが、取り敢えず行くしか無いか…。
魔導士は自分と勇者の額に手を当て呪文を唱えた。
『ヒーラ!!』
魔王との戦いでボロボロだった二人の身体が回復してゆく。
「ありがとうっ!!」
満面の笑顔で礼を言う勇者に、
「…ヘロヘロのまんまで案内されたら日が暮れるからなっ…。」
と、ちょっと照れながらそっぽを向く魔導士。
それを見て更に笑みが溢れる。
「じゃ、早速ーーー。」
と、勇者は彼の手を取り、腕を腰に回した。
突然の事に、魔導士は慌てて逃げようとする。
「ッなっ…てめぇっ、どっ…どういうつもりだっ!?俺にそんなシュミはねぇッ!!」
顔を真っ赤にして、魔導士は抵抗する。
意外な反応に、勇者も少し照れながら説明する。
「いや…近づかないと危ないから…飛ばされたら大変だし…。」
逃げようとする彼をしっかり抱え、勇者は呪文を唱えた。
『転送っ!!』
シュンッ…!!
二人姿は城跡から消え去った。
その後平和を取り戻したこの世界では、光と闇の二人の勇者が手を取り合い、魔王を倒し、天界へ導かれたと伝えられたとか…。
ファンッ!!
光が弾け、二人は何処かの大地に降り立った。
周りは先程とはまったく違う雰囲気の景色。
見た事もない紋章。
何処かの王宮の様な広間だ。
「お待ちしておりました、〘閃光の勇者〙殿ーーー。」
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