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「もう少しだけ」
男は女の耳元に甘い声でつぶやく。
「ええ。もう少しだけ」
女は男の瞳を見つめてささやく。
公園のベンチで一組の男女が肩を寄せ合って、無言で夜空を見上げている。
今宵は中秋の名月。雲一つない夜空に浮かぶ象牙色の妖しい光が二人の顔を照らす。
しばらくすると、女が腕時計を見る。
「あ、もう私行かなくちゃ。終電に間に合わなくなる」
「そうか、改札まで一緒に行こう」
「ありがと」
早足で駅に着いた二人は、まだ息が切れている。
「今日は楽しかったよ」
「私もよ」
「来週のことは、また近くなったら決めよう」
「そうね。じゃあまた」
女は改札に入ると、名残惜しそうに何度も男に手を振り、人波にのまれてプラットフォームへと姿を消した。
---To be continued.---
「すてき。『もう少しだけ』ってセリフ、私も言われたい」
理沙はうっとりとつぶやき、ポテトチップスを一口かじった。
ポテトチップスを頬張りながら、ドラマ『もう少しだけ』を見るのが好きだ。
(それにしても後引くわね、ポテチ。もう少しだけ食べよ)
パリッパリッ。
(もう少しだけ、っと)
食指が動くのが止まらない。
(おいしかったー。幸せ)
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