ホワイトムスクの午后

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確かに蜂蜜をすくう以外に使い道無さそうだ。 私の前に置かれた焼きたてのパンケーキにトロリと蜂蜜がかけられる。 溶けたバターが黄金色の蜂蜜に覆われ、食欲をそそられた。 「実は私、あまりメイプルシロップが好きじゃないんですよね…。だから私はいつも蜂蜜なんですよ」 上杉さんは自分のパンケーキに蜂蜜を垂らしながら言った。 「カナダではステーキにもメイプルシロップをかけて食べるんですよね。カナダ人って味音痴なんですかね…。日本で言ったら何にでも味噌塗って食べるみたいなモノでしょ」 私は想像した。 刺身に味噌を塗って食べる。 もしかするとそんな地方もあるのかもしれないが、それじゃ素材の味意を楽しむ事が出来ない。 「うん…。ステーキには塩と胡椒が一番良い気がする」 「ですよね」 上杉さんは首を横に傾けながらそう言った。 そんな可愛い仕草をたまにするのもこの人の特徴だった。
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