ホワイトムスクの午后

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「こんな会話って作家と編集者だから成り立つ会話で、普通のサラリーマンは冬の午後にお茶を飲みながらしないでしょう」 私の言葉に上杉さんは少し考えて、 「私たちの世界って、普通、口にしない事や考えない事を真剣にやり取りしますよね。例えばこのセックスはどんなセックスなんですか…みたいな…。作品の中にある表現について真剣に話をしたりとか」 「そうですね…」 私はコーヒーカップをテーブルに置いた。 「私や先生にとっては、それが日常で、こんな職業で無い人は非日常だったりするんですよね」 私はパンケーキにナイフを入れながら頷いた。 「でも、読者はそれが非日常の人がその大半を占める筈なんですよ」 確かにそうだ。 私はパンケーキを食べながら頷く。 「さっき言ったAVなんかも、普通の人はそれを楽しみの一つとして観ますよね。だけど、私なんかは、性描写の表現方法をどうするか…、なんて事を考えながら見るんですよね。まあ、女性の身体に蜂蜜塗って舐めるなんて小説書く作家も少ないとは思いますけど」
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