ホワイトムスクの午后

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私の書く内容を彼女なりに分析し、消化している。 前任者はロボットの様な編集者だったので、 「此処はこんな表現にして下さい」 「此処は伝わりにくいです」 と端的な会話しか存在しなかった。 それに比べると上杉さんは人間味を持って私と会話をしてくれている事がわかる。 随分と楽になった。 私は自分の思う通りに書けば良い。 間違えた時は信頼する編集者が方向修正してくれる。 「上杉さん」 私は空になったコーヒーカップをテーブルに置いた。 上杉さんは立ち上がり、そのカップにお代わりを注ぐ。 「私はあなたが好きです」 上杉さんは私の言葉に手を止め、振り返った。 「え…」 上杉さんの驚く表情を見て私は失錯を覚えた。
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