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少し辺りが暗くなり始めた頃に上杉さんは会社に戻ると言い、バッグを持った。
「いつもすみませんね。色々とやって頂いて…」
私は頭を下げる。
「いえいえ。いつでも言って下さい。あ、足らないモノはまたメッセージ送っておいて下さいね。今度買ってきますので」
私は礼を言うと、上杉さんと一緒に玄関を出た。
もう上着が無いと玄関を出るだけでも寒い季節になった。
玄関から漏れるホワイトムスクの香りが冷たい大気に溶けていく。
「先生…」
上杉さんは車にバッグを乗せると振り返り私の顔を見た。
「実は来月から雑誌の方へ異動しないかと会社で言われまして…」
突然の話だった。
会社という組織で働くからにはそれも仕方ない。
「それを先生に相談しようかと思って、突然やって来ました」
私は無言で上杉さんに頷いた。
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