ホワイトムスクの午后

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お昼を回った頃に自慢の赤いアウディを乗り付けてやって来た上杉さんは、忙しくてお昼を食べそこなったらしく、玄関を入るなり、 「先生…。何か食べ物ありませんか…」 と言い、慌ててうちの食糧庫、と言ってもシンクの上の棚の事ですが…、を開けて、色々と物色し始めた。 賞味期限の切れたレトルトのミートソースを見て、 「何で賞味期限が切れて三か月も置いてあるなんて事が起きるんですか。先生もパスタくらい作れるでしょ」 と怒られ、更に、半年前に賞味期限の切れた秋刀魚のかば焼きの缶詰を見付け、 「信じられない。いつでも食べれるモノじゃないですか。缶詰の賞味期限が切れるなんて浜辺に流れ着いた缶詰だけですよ」 流石は編集者。 表現が面白いと感心してしまった。 私はカウンターの上の鎮痛剤を一つ取り、口に放り込んでコーヒーで流し込む。 「またコーヒーで薬飲んでる…。お水も飲まないと賞味期限切れますよ」 四十を過ぎてアラサーの女性にこんなに怒られる事があるなんて考えてもみなかった。
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