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裏切り?
その夜、やはり智輝の帰りは、遅かった。
しばらくの間、忙しいようなので、毎日、夜中12時を過ぎる。
いつもなら、松田さんが送って来てくださる。
『今日は、タクシーで帰るそうです。』と、事前に松田さんから連絡をもらった。
夜中1時頃になった頃、酔った智輝から電話があった。
「茉子〜もうすぐ着くからね〜」と上機嫌。
『今日は、事務仕事じゃなく飲みに行ってたんだ』と、思いながら、下まで降りて待ってよう!と、
入口前まで降りて、ガラス越しに、中から様子を伺っていた。
すると、タクシーではなく1台の車が止まった。
何やらカップルが抱き合い何度も何度もキスをしている。別れを惜しんでいるのだな、と見ていた。
女性の運転で、男性が降ろされた。
その男性は…智輝だった!
「え?」
『今、キスしてたよね?』
自分の目の前で抱き合いキスをして、車から降りてきた男が、まさかの智輝
車の女性に手を振り、車は走り去った。
智輝が入口から、ふらふらしながら入って来た。
「茉子!」
「え?どういうこと?」
「あー仕事仲間に送ってもらったんだ。」
「うん、それは松田さんから聞いてた。そうじゃなくて…今抱き合ってキスしてたよね?」
「なーんだ、見てたの?挨拶だよ、そんなの。茉子もしよう!」
キスしようとするから、パチンと頬を叩いた。
「痛っ!なんでだよ?」
「何言ってるの?他の女の人とキスしてすぐに、どうして平気で私に出来るのよ!」
「だから、あれは挨拶だってば!」
「ふざけないで!」
「どうせ茉子も、元彼さんとしたんだろ?」
「するわけない!何言ってるのよ‼︎」
「ま、俺は見てないから…」
ダメだ、酔ってるのか?それとも本当に疑われているのか?茉子が知ってる智輝とは、まるで別人。
いや、もしかすると、これが智輝の日常の姿なのかもしれない、とさえ思った。
とりあえず、部屋まで連れて帰らないと…
エレベーターに乗る。抱きついて、キスをしようとする智輝。断固拒否!
あの女の人の香水の匂いがした。気持ち悪い。
泥酔しているようだから、そのままベッドで寝かせる。苦しそうな服を脱がせて、下着のまま寝かせた。
リビングに戻り、情けなくて涙が流れた。
知らない智輝の一面。これは、日常だったのか?
私の命を助けてくれた優しい智輝は、どこへ行ってしまったの?ホントに同じ智輝なの?
訳が分からなくなった。
茉子は、自分の荷物をまとめた。
そのまま明るくなるのを待って、荷物を持って、
マンションを出た。
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