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早朝、タクシーで、以前のマンションに戻り、窓を全開にし、朝早いことから、掃除機はうるさくてかけられない。静かに隅から隅まで、拭き掃除をする。
どうせ、一睡も出来なかったから、良い運動になった。サッパリした。
『良かった、解約する前で…元に戻っただけだ』
でも、もうすぐ解約期限だ。新しいマンションを探さないと…
とりあえず、シャワーを浴びて、出勤の時間。
いつもより、早めに出る。
そんな時に限って、電車で凌也に会う。
「おーおはよう!早いね。昨日は、どうも。」
「おはようございます。昨日は、ありがとうございました。ご馳走様でした。」
「いいえ。あれ?どうしてこの電車?」
そう、智輝のマンションとは逆からの乗車。
『鋭い!』
「…」
「何かあった?」
「…」
「何かある時は、そうして黙りこむ。」
わざと、黙り込んでいたわけではなく、話そうと思ったが、涙が溢れ落ちそうになったから、やめてしまったのだ。
凌也が顔を覗き込む。
「茉子?どした?」
ドアの方を向いて泣いた…
人目につかないよう、壁になり隠すように凌也は、立ってくれていた。
マスクのおかげで、さほど目立たなかったが、止め処なく溢れ落ちる涙は、マスクに吸い取られ、マスクを交換しないといけないぐらいだ。
最寄り駅でトイレに入り、マスクを交換する。
トイレの前では、凌也が待っていてくれた。
「急ぐから早く来たんじゃないんですか?」
「そんな顔してるのに、1人置いて行けるほど冷血ではない。」
ベンチに座るよう促される。
「話して!」
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