歯車は動き出す~𝐸𝑝𝑖𝑠𝑜𝑑𝑒 𝑧𝑒𝑟𝑜~

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妖怪? 悪魔? もしかして、死神か? いや、死神は怖い。 小説や漫画を読む分にはわくわくする。 でもやっぱり、目の前にすると少し怖気づいてしまう。 「あ、安心してください! わ、わたしは敵ではないです! この眼をよーく見て」 志岐は万結に真剣な眼差しを送る。 きっと、志岐は悪者なんかじゃない。 ポジティブに、ポジティブに考えよう。 もしも悪者だったら、親交を深めて改心させてしまえばいい。 「わたしは幽霊です。 わたしには生前『叶えられなかった願い』があるようで、神様の御命令によりここに戻ってきたのです」 ミッション、か。 「その『願い』を見つけることが課題なのです。記憶が朧気なので、その『願い』を思い出せないのです。 難しいでしょう?」 「そうだね……」 「お願いです、万結殿。 わたしの忘れてしまった『願い』を一緒に探してください」 万結は自分の人生について振り返ってみた。 子どもの頃は今よりも、もっと前向きで毎日が新鮮だった。 中学生の頃は、ただ安穏とした日々を送っていた。 それでもひそかに、異世界や摩訶不思議なものと関わることを憧れた。 きっと、小説や漫画みたいなことが起こるのかもしれない、そう万結は感じた。 もっと、自分を変えていきたい――。 「志岐、協力させて」 万結は大きく首を振った。 もちろん、縦に。
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