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「これは願掛けなの。進路調査票に『本当の夢』を書いて、それを紙飛行機にして、学校の屋上から飛ばす。そうすると、夢が叶うんだって」
彼女の口調はどこか夢見心地で、言っていることも信憑性ゼロ。しかし、ゆるぎない信念が一本、固い芯のように通っているような語り口だ。その妙なギャップに惹かれて、気づけば私は彼女の隣に立っていた。
「それ、どこ情報?」
「忘れた」
「願掛けしてまで叶えたい夢なの?」
「うん」
「……何になりたいの?」
「……願掛けの効果が無くなっちゃうらしいから、内緒」
彼女の視線は再びフェンス越しへと向けられた。空は、人ひとりの願いを受け止めることなど造作もないと言わんばかりに、大きく、広かった。
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