願いをのせて、飛んでゆけ

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 放課後。澄み渡る青空の下、屋上にお目当ての彼女はいた。しゃがんで何か手を動かしているようだ。 「何してるの? 先生が進路調査票出せって言ってたよ」 私が近づくと、彼女は作業の手を止めて顔をあげた。 「いまからこれを飛ばすの」 そう言って彼女が私の目の前に差し出したのは、紙飛行機。よく見ると、紙に何か印刷されている。第一志望、第二志望、第三志望という文字が行儀よく枠内に収まり、その上には大きく「進路調査」の文字が。 「私の話聞いてた?! 提出しないといけないの、それ!」 彼女は私の言葉などおかまいなしに、紙飛行機を持ってフェンスへと歩き出した。ぼんやりとフェンスの向こうの青空を見やり、腕を動かして紙飛行機を投げるシミュレーションをしている。 「ちょっと待っ――」 「あのね、」 フェンスの前で立ち止まった彼女は、私の制止をさえぎるように口を開いた。
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