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ギャルソンがお料理を運んできて、リラは生れて初めてのフルコースディナーを味わった。
「キャビアのアミューズでございます」
ギャルソンが、小さなキャビアのタルトをサーブした。
「ママ、アミューズって何?」
「お楽しみって意味の、小さなお料理よ。そのまま、手でつまんで頂きなさい」
一口で食べられる小さなタルト生地はサクサクして、プチプチしたキャビアの下にはとろりとしたクリームチーズが隠れていた。
口の中で、違う食感がまじりあい、キャビアの塩気が心地よかった。
リラは、あまりのおいしさに無口になった。
フォアグラのポワレは焼き目がカリッとして、中はとろりとしていた。
トリュフ入りコンソメスープはとてもよい香りと繊細な味が舌に優しかった。
鮑のステーキ、オマール海老のローストと少しづつ美しく盛られたお料理がサーブされた。
ママ仕込みのマナーは立派なもので、初めてだというのにリラは、コトリとも音をさせずにカトラリーを扱った。
その優雅さは天性のものを感じさせた。
「リラちゃん、初めてだって思えない程優雅にお料理を食べるね。ここが行きつけだっていうサムはガチャガチャと騒がしいのにね」
「料理なんて美味しく食べればそれでいいんだ。リラもそんなお上品に食べなくていいんだぞ。貸し切りなんだ、大口あけて食え」
リラの前でマウントを取り合う賢人とサムを、沙羅が微笑みながら見ていた。
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