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リラの制服姿を見て男が聞いた。
「今日卒業したから、もう中学生じゃありません。それに、初対面のあなたにお前呼ばわりされるいわれはありません」
「なんだと?」
「大体、何か言うなら、いくらだ?ではなくありがとうだと思います」
「なんだと? 子供のくせに俺に口答えするのか!」
「子供じゃありません。私は明日から社会人です」
「生意気な!」
「なんですか? どうしてそんなに偉そうに言うんですか? 大人だから偉いって訳じゃないと思います」
「この、生意気娘が!」
「なによ、偉そうな、威張りんぼう!」
男性とリラは徐々に口論のようになっていった。
その時、男の運転手がケーキの箱を持って近寄ってきた。
「そろそろお時間ですが……」
男はリラをにらみつけると、そのまま店を出て車に乗って行ってしまった。
「お金持ちっぽいのに、暗い目をしていたな。綺麗な人なのに感じ悪い……」
リラが呟くと、ママが言った。
「お金がありすぎると皆あんな目になるのよ。ママもリラもお金がないからいつも笑っていられるのよ」
「ええっ? お金があるとあんな目になるの? なら、私もママもお金がなくってよかったわね」
二人は大笑いすると、やっとケーキを食べ始めた。
美味しくて、嬉しくて、リラは最高に幸せな気持ちだった。
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