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リラは雑誌を買わないけれど、友達の読んでいる雑誌にでてきそうな人だった。その人は、店の人に適当にケーキを10個程、と注文した。
「ママ、適当に10個だなんて注文する人いるのね。どうして自分で選ばないのかしら」
「自分で食べるんじゃないのよ。きっとおみやげだわ」
「おみやげだって、あげる相手のことを考えて、選んであげればいいのに」
リラは男の人を見た。チラッとこちらを見た男の人と目が合った。
彫刻のように美しい顔立ちの男性は二十代くらいの年頃に思えた。
リラにとっては大人の人だった。大人の人相手に、どこか批判的なことを言ってしまってリラは反省した。
そこで、リラは男性ににっこりと微笑みかけた。
男の人は、一瞬驚いたような顔をすると、不愉快そうにリラから目をそらした。リラはなぜか叱られたような気がして、悲しくなった。
その時だった。男性の傍を歩いていた小さな子供が手に持っていたアイスクリームを男性の上着にぶつけてしまった。
時間が止まった。
淡いベージュの上着についた、真っ赤ないちごのアイスクリーム。
時間が動き出して、子供が泣き出した。
「うぇええええん」
「どうして、お前が泣くんだ!」
男性は、子供を叱りつけた。
「うわあああああん」
子供が一層大きな声で泣き出し、子供の母親がとんできて男性に謝った。
「俺はこれから仕事で取引先に行く。この汚れをどうしてくれるんだ!」
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