104人が本棚に入れています
本棚に追加
リラ、ジャケットの汚れを落とす
男性は、低い声で母親に言った。母親がハンカチで拭こうとしたその時、
「待ってください!」
リラが言った。リラが男性と母親の傍に行った。
「5分で汚れを落とします」
リラは男性の上着を預かると、濡らしたタオルといつも持ち歩いているスプレーを取り出した。
汚れた部分をタオルで叩くようにしながら、スプレーをかけると見る見るうちにいちごの赤が薄くなっていった。
リラは丁寧に、かつ素早く汚れた部分をしばらく叩いていた。
「うん、これで大丈夫!」
汚れの部分が湿って少し濃い色になっていた。
「多分お仕事に行かれる間に乾くと思います。乾いたら元通りになっているはずです」
男性に上着を渡しながら、リラは泣いていた子供の頭をなでて慰めた。
「いくらだ?」
男が低い声で聞いた。
「は? いくらって?」
しゃがんで子供を慰めていたリラは、不思議そうに言って男を見上げた。
「汚れを落とした料金だ」
「料金?」
リラは立ち上がると男性の前に立って男性の顔を見つめた。
本当に見惚れる程美しい顔をしている。
だが、その瞳は冷たい色をしていた。
「料金なんていりません。汚れを落とすのは得意でいつもクラスメートにしてあげているだけです」
「お前は中学生か?」
リラの制服姿を見て男が聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!