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リラ、クリスタル清掃に就職する
「白金、クリスタル清掃から採用通知がきた」
「ありがとうございます!」
リラは元気に答えると、担任の佐藤に微笑みかけた。
佐藤はリラをじっと見つめた。
すらりとした細身で長身の生徒。十五歳とは思えない程、大人びて落ち着いている。輝くような象牙色の肌にキラキラ輝く切れ長の黒い瞳、いつも微笑んでいるような口角の上がった口元。艶やかな黒髪はいつもきちんと三つ編みにしている。
背筋を伸ばして優雅に歩き、成績もよい。
佐藤が担任になった時、白金リラは高貴な生まれの富裕な家の娘に違いないと、思っていた。だが、それは勘違いだった。
「白金の成績なら高校だって行ける……就職なら、もっと良い会社もあるのに。よりによって清掃会社とは」
この春中学を卒業する白金リラは、卒業後社会人になる。
勘違いした佐藤が知ったのは、リラが極貧の生活保護世帯の娘だということだ。成績が良いので、佐藤は奨学金を貰って高校進学することを勧めた。
だが、リラはすぐにでも働いて家計を支えたいと言った。
「今まで国の税金で生活をさせて頂いたのですから、これからは自分の力でお母さんを支えます。他にも困っている人はいっぱいおられるんですから、いつまでも国のお世話にはなりません」
佐藤はため息をついた。この生徒は、なんという無垢で清らかな精神の持ち主だろう。過酷な子供時代を過ごしてきたのに、ひねくれることなく真っ直ぐな心根を持ち、他者を思いやる心を持っている。
そんなリラを見ていると、やり方次第でもっと良い人生があるはずだと思うのだ。
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