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特別番組『髪を売る少女』
使い古された1台のトラックが、土煙を出しながら舗装のない道を長い時間走っている。そのトラックに乗る数人の男たちは、中国の山奥にある小さな村へと向かっていた。彼らは『少女の髪を集める』という仕事をしていた。
小さな村に到着すると、トラックの男が村長から承諾を得て少女たちを集めてある話をし始めた。いきなり村にやってきた男たちの話しを、地面に座りながら真剣に聞く村の少女たち。どうやら少女たちは、その男の話しの内容に納得したみたいに小さくうなずいていた。
すると1人の男がある少女の長い髪を乱暴に掴み、髪をゴムで何束も結んでいった。それから持っていた錆びたハサミで、その髪の根元から容赦なくザクッ!ザクッ!と切っていった。
少女は乱暴に髪を切られても何も言わず、歯を食いしばりながら痛みを堪えていた。そして男は切り終えた長い髪の束を、大きなビニール袋へ次々と投げ入れていく。乱暴に切られた少女の髪型は、ショートカットとは言えない『虎刈り』のような姿になっていた。
しかし髪を切られた少女は嫌がるどころか、何故か笑みを浮かべていた。
少女は男からお金をもらい、大きな瞳を潤ませながら、
「このお金で・・・教科書が買えます」
と笑顔で答えていた。
男は少女たちの毛束が入った大きなビニール袋を何袋も荷台に詰め込み、またトラックに乗って村を去って行った。そしてまた別の村へ行き、このような作業を何度も繰り返すのだった。
その長い髪はどこへ行くかというと、また違う業者の手に渡されていった。長い髪を受け取った業者はそれを熱湯で消毒し、その後に脱色剤で黒い髪の毛を真っ白に抜いていった。やがて白くなったその髪の束はブルー・ピンク・グリーン・レッドなど様々な色に染められて、小さなビニール袋に包装され出荷されていった。
そう。
あの中国の少女たちが無残に切られていた長い髪の毛は、日本で流行している『ヘアエクステ』として売られていたのだ。
このような少女たちは中国だけでなく、東南アジア・インド・中東などにも存在する。一部の国では『黒いダイヤ』とまで呼ばれており、黒くて長い少女の髪は特に高値で取り引きをされていた。
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