在りし日のかけら

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テレビの番組が終わり、かつてない衝撃が部屋の中の空気を凍らせる。胸の奥が締め付けられて何だかとても息苦しい。まるで心臓をギュッと握られているみたいだ。 私は自分のブルーやピンクのエクステを触りながら、 「このエクステが、あの子たちの髪?」 と弱々しく呟いた。鏡に映る自分の惨めな姿を見つめ、目からはポロポロと涙が溢れてきた。 「学校にも行かず、ヤバイことをやって、警察に捕まって、親にも心配かけて・・・ うわぁぁぁ!」 私は叫びながら机の引出しの中から工作用のハサミを取り出し、髪に付けているエクステを根本からザクッ!と切った。 1本・2本・3本・・・ ハサミで雑に切られていく髪の毛の残物が、フローリングの上にパラパラと落ちていく。 そして自分で切り取った数本のエクステを強く握りしめながら、 「私は、私はいったい何やってるんだぁ!」 とそのままゴミ箱に捨てようと握っている拳を振り上げた。すると大きな瞳を潤ませて笑っていたあの少女の声が、頭の中を突き抜けていった。 『このお金で・・・教科書が買えます』 振り上げた拳をゆっくり降ろしながら、力が抜けるようにその場でしゃがみ込んだ。 「あの子の髪、捨てれるわけないじゃん」 私にとって自分の髪から切り取ったこのエクステは、まるで両腕や翼のないギリシャ彫刻の破片(かけら)のようなものだ。泣き顔にエクステを強く押し当て、今まで自分がしてきた言動を心から悔やんだ。 「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」 しばらくして少し気持ちが落ちつくと、切り取ったエクステを大事に封筒に入れて、そっと机の引き出しにしまった。 それから私はすぐに美容室へ行って髪を黒く染め、再び学校へ行こうと心に決めた。出席日数や学力のことなどいろいろ問題はあったけど、母のささえもあり高校はなんとか無事に卒業することができた。そして髪を扱う仕事をしようと思い、私は迷わず東京の美容専門学校へ入学した。
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