31人が本棚に入れています
本棚に追加
テレビの番組が終わり、かつてない衝撃が部屋の中の空気を凍らせる。胸の奥が締め付けられて何だかとても息苦しい。まるで心臓をギュッと握られているみたいだ。
私は自分のブルーやピンクのエクステを触りながら、
「このエクステが、あの子たちの髪?」
と弱々しく呟いた。鏡に映る自分の惨めな姿を見つめ、目からはポロポロと涙が溢れてきた。
「学校にも行かず、ヤバイことをやって、警察に捕まって、親にも心配かけて・・・ うわぁぁぁ!」
私は叫びながら机の引出しの中から工作用のハサミを取り出し、髪に付けているエクステを根本からザクッ!と切った。
1本・2本・3本・・・
ハサミで雑に切られていく髪の毛の残物が、フローリングの上にパラパラと落ちていく。
そして自分で切り取った数本のエクステを強く握りしめながら、
「私は、私はいったい何やってるんだぁ!」
とそのままゴミ箱に捨てようと握っている拳を振り上げた。すると大きな瞳を潤ませて笑っていたあの少女の声が、頭の中を突き抜けていった。
『このお金で・・・教科書が買えます』
振り上げた拳をゆっくり降ろしながら、力が抜けるようにその場でしゃがみ込んだ。
「あの子の髪、捨てれるわけないじゃん」
私にとって自分の髪から切り取ったこのエクステは、まるで両腕や翼のないギリシャ彫刻の破片のようなものだ。泣き顔にエクステを強く押し当て、今まで自分がしてきた言動を心から悔やんだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
しばらくして少し気持ちが落ちつくと、切り取ったエクステを大事に封筒に入れて、そっと机の引き出しにしまった。
それから私はすぐに美容室へ行って髪を黒く染め、再び学校へ行こうと心に決めた。出席日数や学力のことなどいろいろ問題はあったけど、母のささえもあり高校はなんとか無事に卒業することができた。そして髪を扱う仕事をしようと思い、私は迷わず東京の美容専門学校へ入学した。
最初のコメントを投稿しよう!