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そうしたら、作業員は降り切った階段から少し奥の通路を指差した。
「ほら、ここからコンビニ行けるよ」
そんなバカな。
通路はだいぶ降りたぞ。
地上なんて随分上の上のはずじゃないか。
そう思いつつ、通路の奥を見ると確かに登り階段。
そこを少し上ると、やはり黄色ペンキが錆びた古い鉄の扉が見えた。
半信半疑でそれを押しやると……
目の前が真っ白になって、目の前に見慣れた自動ドアがあった。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開いて、店員が声をかける。
間違いなく、確かに、コンビニだ。
……コンビニだ。
就業開始の鐘がなる直前、ようやく自分の部署の扉を開けた。
「今日は遅いね、ギリギリじゃん」
いつもの同僚が声をかける。
「うん、コンビニ行ってたから」
「それにしちゃ随分遅いじゃん」
「道、混んでたし、いろいろあったから」
息も切れ切れに、 コンビニのトイレで履いたストッキングのシワを伸ばし、手にした野菜ジュースを飲みながらそれだけ答える。
「あー、そういう時あるよねぇ」
同僚の共感に、口が出そうになるがすぐ飲み込んだ。
こういうことが、コイツにもあるんだったら聞いてみたい。
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