フリーマン

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ユウはちょっと変わった子だ。 授業中急に歌いだしたり、嬉しくなったら急に笑ったり。 だからいつも先生に注意されていた。 「ユウさん、今は授業中です。お静かに」 叱られれば、歌うことはやめるけれど、それでもやっぱりまた歌ってしまうことがあった。 叱られたって、歌うことが大好きだった。 ユウは本屋さんによくでかけた。 オススメの本には目もくれない。 人気のミュージシャン、かっこいい俳優、かわいいアイドル。 たくさんある、みんなの好きなものには目もくれない。 だれもが流行りの本や動画を選ぶ中、ユウはいつも音楽を探していた。 試しに聞けますよ、という視聴コーナーが彼女のお気に入りの場所。 自分で選んだ音楽のまあるいカードを機械に入れて、 いつもいつも、自分が好きになりそうな音楽を探して聞いていた。 有名な人でもなければ、はやりの映画の歌でもない。 だあれも見向きもしないような音楽。 けれど、ひっそりと置かれている音楽。 けれどそれは隠された宝物を見つけるようなキラキラ感。 今日もいい音楽を見つけて、ユウは嬉しかった。 鼻歌歌いながら帰ろうとすれば、店の外にいた管理局の人が注意する。 「ここは歌を歌う場所ではありませんよ」 ユウは慌てて歌うのをやめて、急ぎ足でそこを離れる。 けれど、人気がいなくなればまた歌うのだ。 大好きな歌を。 今日見つけた、キラキラの宝石を。
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