フリーマン

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その本屋さんには、ここ最近、いつも管理局の人がいた。 「このあたりに出るらしい」 「どんな姿をしてるんだ?」 「聞いた情報によると、汚らしいヒゲをはやした、汚らしい服を着た男だ」 「そんな人なら、すぐに見つけられそうだな」 パリッとした黒い服を来た男女二人の管理員が、そんな話をしている。 彼らは危険人物を探していたのだ。 この世界の決まりを守らない、悪い人。 規則を破って、管理されない困った人物。 その上、たくさんの人々が彼に惑わされて、決まりを破ってしまうという。 一言で言えば、いわゆる「カリスマ」的な悪い人。 だから管理局は血眼(ちまなこ)で彼を探していた。 そうしなければ、この世の中は決まりを守らない人々であふれかえってしまうから。 けれど、どういうわけか、その危険人物はちっとも捕まらないのだ。 名前もわからない。 だからみんな、彼のことを「フリーマン」と呼んでいた。
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