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今日もいつものように本屋さんに足を運ぶ。
いつものように管理局の人をやり過ごし、
店の中で歌いながら、
今日のお気に入りを聞いて、
そしてまた自分にとってのキラキラを探そう!
そんなことを思いながら、昨日の音楽を聞いていた。
「君は、その音楽が好きなんだね」
音楽を聞いていると、突然声をかけられた。
振り向けば、そこにいたのは、明らかに「あやしいおじさん」だ。
いや、おじさんと言うにはまだ若いかもしれない。
でも服装は、だらしなく見えたし、
おヒゲも、ちょろちょろはえてるし、
ボサボサの髪の毛は、汚い帽子で隠しているし、
そんな姿を見たら、どう考えても「あやしいおじさん」にしか見えない。
けれど、ユウは「あやしいおじさん」をじっと見て、一つ気がついた。
目がキラキラしていて、なんだか子どものように見えた。
本当に楽しそうな目。
まるで、なにかおもしろいイタズラを考えついて、それをこっそり実行しようとしているような、そんないたずらっ子の目だ。
「君はフリーマンを知っている?」
あやしいお兄さんにそう問いかけられて、ユウはうなずいた。
だってフリーマンは有名だもの。
管理局が悪いやつだと必死に探しているけれど、でも実はそんな彼を、誰もがこっそり会いたいと思っている。
とっても自由で楽しくて、彼にあったら、彼と一緒にこの世界を飛び出したくなるくらいだって。
「君は、フリーマンに会える人だよ。彼が君を招待すると言っていた。どうする?フリーマンの世界に行ってみる?」
フリーマンの世界って、どんなところだろう?
ユウは気になって、思わずうなずいた。
「じゃあ決まり!今から僕が案内するから、ついておいで」
そういってあやしいお兄さんは、るんるんと鼻歌でも歌うようにしながら店の出口に向かっていった。
その姿を見てユウは、はっとした。
たしか、出口には管理局の人がいたはず……!
そんな彼女の後ろから声が聞こえた。
「いたか?」
「いや、いない。店の中にいたと思ったんだがな……」
「まだ店の中をうろついているはずだ。あんなあやしい格好の男、普通いないだろ、すぐ見つかるはずだ!」
そう言って店の中を探して回る管理局の人たちを尻目に、あやしいお兄さんは鼻歌を歌いながら店の外に出ていった。
ユウも急いで後を追う。
不思議なことに、堂々と店の外に出たのにちっとも管理局の人は気づかない。
店の中にいた人も、どういうわけかあやしいお兄さんに目もくれない。
みんな流行りの本を見ているか、管理局オススメの映像を眺めているばかり。
どうしてこんなにあやしいお兄さんに、誰も気が付かないのかしら?
ユウは首をかしげながらお兄さんの後を追いかけた。
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