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あれは俺が5歳の頃。冬のひどく寒い日のことだった。
俺は朝から近所の友達と、湖にスケートをしに来ていた。氷は分厚く、簡単に割れることもなく、俺たちはスケートを楽しんでいた。
しかし、昼になって気温が上がり始めた。雪や氷は太陽に照らされ、少しずつ溶けていく。そしてその瞬間はやってきた。
調子に乗って湖の真ん中まで滑った時。
みしり、と足の下で音がした。
一瞬にして俺の体は冷たい水の中に落ちていた。溶け始めた氷が、俺の体重で割れたのだ。
俺は泳ぐこともできない。水は冷たく、手足の感覚を奪っていく。思い切り水を飲み込んで、息ができずに足掻いた。
助けて、父さん、母さん――!
そう思った時。湖のほとりで俺たちを見守っていた父が寒さに震え、家で暖炉にあたっていた母は突然倒れてしまった。そう、俺は『父と母と感覚を共有した』のだ。
俺はその後、友人らの親に助けられた。だが、母はそれからずっと寝込むことになった。体が弱いせいで、風邪をひくとすぐには治らないのだ。
その後も俺が体調を崩したり怪我をする度に、父と母に無意識に感覚を共有させた。その度に母は倒れ、父もひどく辛そうな顔をしていた。
そしてある日、母は家を出て行った。
「療養のために実家に帰ったんだよ。お前のせいじゃない」
と父は言っていたが、俺が引き金になったのは火を見るより明らかだった。
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