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 俺の魔法は無意識にしか使えない。使えるとも言えないお粗末なものだった。人に害しか与えない。  俺を見捨てず育ててくれた父は、ある朝起きると畑で1人倒れていた。心臓発作だったらしい。  働いて稼いでくれていた父がいなくなり、生きるためには自分で稼ぐしかなかった。こんな俺の不甲斐ない魔法が、誰かの役に立つのなら――そう思って労働事務所に登録した。  でも、その結果がこれだ。俺の魔法を見込んで依頼してくれたステラを落ち込ませ、俺は何もできないまま。 「……本当にごめん」  俺は拳を握りしめて、絞り出すようにそう言った。ステラは静かに首を振り、俺に金貨を5枚渡した。金貨が5枚あれば、3ヶ月以上生活できる。 「いや、俺は何もしてないのにこんなに受け取れない」 「いいの、お礼とお詫び。受け取って」  力なく微笑んだ彼女は、俺の手に金貨を乗せてぎゅっと握らせる。 「夜に備えてあたしは今から寝るね。あなたは帰っていいよ、ありがとう」  そう言って俺に背を向けて、部屋へと戻って行った。  ばたん、と音を立てて部屋の扉が閉まる。俺は金貨を机の上に置いてアトリエを出た。  不甲斐なさに唇を噛み締め、後悔を振り払うように俺は走り出した。  薄いコートは風など凌いではくれない。身を斬るような冷たい風が吹き荒む中、俺はクリスマスに浮き足立つ街を走り抜けた。  どんよりとした重い灰色の雲が、空に広がっていた。
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