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Ⅵ
屋根を叩く雨音で目を覚ます。走って走って家に帰って、そのままベッドに潜り込んでこんこんと眠っていた。
枕元の時計を見る。時刻は夕方の6時。
はっとステラのことを思い出す。
――12月3日。流星群が見えるはずなんだ。それが最後のチャンス。
この雨では流星群など見られそうもない。目が見えなくなる彼女の、最後のチャンスなのに。
俺はベッドを飛び出した。
役立たずの魔法しか使えない俺が、彼女のために出来ること。何かあるはずだ。俺は必死に考えた。
ブラウン管のテレビをつける。砂嵐の後に天気予報が流れ始めた。
『……雨はイースト地方に今夜中降り続けるでしょう。ウエスト地方は晴れ、明日はイースト地方からの雲が流れてくるので雨に……』
俺はテレビを消し、コートを引っ掴んで家を飛び出した。俺に出来ることがひとつだけ、見つかった。
納屋に飛び込んで、父の形見のバイクに飛び乗る。昔はよく父と二人乗りをしたものだったが、父が死んでからはしまい込まれていた。
乗り方は覚えている。俺はヘルメットを被り、キーを刺した。
ヴヴヴン、と低い音を立ててエンジンがかかる。俺はすかさず足をステップに乗せた。ギヤを入れ、アクセルを捻る。ぐんっと体が前に進む感覚と共に、バイクは勢いよく走り出した。
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