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Ⅱ
5年前の12月。粉雪の舞う日のことだった。
「お前の魔法に合う仕事はないよ、帰った帰った!」
肩を突き飛ばされて、労働事務所を追い出される。よろけて石畳に手をつくと、溶けて濁った雪が袖口を汚した。随分と乱暴だな、と振り向くと、
「さっさとどっかに行け! 役立たずめ!」
髭面の事務員にしっしっと手を振られ、壊れそうな勢いで木の扉が閉められる。
「んだよ、みんな魔法魔法って」
俺は舌打ちをして立ち上がる。冷たい風が、薄いコートの隙間から入り込んで体を冷やす。先程濡れた袖も凍るように冷たい。
ぶるりと身震いして、俺はのろのろと歩き始めた。
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