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「星集めの画家? なんだそれ?」  俺が首を傾げると、彼女はふふんと鼻で笑った。 「夜空を掬い取るの。素敵でしょう?」  ますます意味がわからない。眉間に皺を寄せて名刺を見つめる俺を見て、彼女は 「来て。口で説明するより見た方が早いからさ」  と、ぐいっと俺の手を引っ張った。そしてずんずん歩き始める。 「今が夕方の……5時か。あと1時間もすれば描けるはず」  細い路地に入り、入り組んだ住宅街の道を抜けた先に、ぽつんと小さなアトリエが建っていた。一見するとただの家のように見える。ただ普通の家とは違い、庭にいくつも池が作られていた。  扉を開けたそこには、所狭しとキャンバスが置かれていた。キャンバスはどれも濃紺や黒に塗り潰されている。  壁際に申し訳程度に置かれた小さな机の上には、絵の具やバケツや筆や齧りかけのりんごが散乱していた。机の隅に置かれたスケッチブックも、全てのページが黒い。  見慣れない光景にきょろきょろとあたりを見回していると、 「片付いてないところは見なくて良いの! こっちよ」  また手を引っ張られた。そのまま奥の扉を開け、庭に出る。
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