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「星集めの画家ってのは、さっきも説明したけど夜空を掬い取るんだ」  庭の大きな池の前に、黒いページばかりのスケッチブックを片手にしたステラが立つ。 「掬い取る? どうやって?」 「まあ見てて」  そう言うと彼女は、スケッチブックを開き、そっと水の中に紙を沈めた。ぎょっとして引き上げようとする俺を制し、彼女はじっと水面を凝視する。 「もうすぐ、夜空が映るはず」  西の空は夕焼けと夜の混じった紫に染まっている。空を見上げると、小さな星が1つ、瞬いた。 「いくよ」  彼女の声に視線を戻す。  真剣な表情で水面を見つめた彼女は、小さな声で呪文を唱え始めた。 「……眠れる星よ。汝のその輝きを、瞬きを、我に与え給え」  水面に、輝く星が映る。ほんの一瞬光ったタイミングで、彼女はそっとスケッチブックを引き上げた。  俺は目を見開く。濃紺しか描かれていなかったページに、水面に映っていた星がそのまま描かれていた。 「これは……本物の星? 魔法?」  俺はそっとスケッチブックに手を伸ばす。濡れたページはみるみるうちに乾き、掬い上げた星が瞬いていた。 「星集めの画家はこうやって、水面に映る星を掬うんだ。星の光を少しだけ分けてもらう。白いページだと星が来てくれないから、全部黒や紺で塗ってるんだ」  ほうっと俺は息を吐く。指先に触れた星は少し熱く、触るたびにちかっと光った。火をつけるとか指先から水を出すとか、今まで見たどんな魔法よりも美しかった。 「すごいな、こんな魔法が使えるなんて」  興奮気味にそう言うと、ステラは歯を見せてにっと笑った。だがすぐに表情が曇る。 「でも、もう諦めないといけないんだ」 「どうして?」  首を傾げる俺に、彼女は哀しげに笑って言った。 「あたしの目、もうすぐ見えなくなっちゃうの」  
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