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 『星集めの絵』は、水面に映った星の光を魔法の力で掬い上げてキャンパスに描くものだ。どれだけの星を掬い上げられるかは、描き手の視力に左右される。つまり、描き手が見えない星は、そこにあっても掬い上げられない。 「ほんの少しの星の瞬きを見て、タイミングよく引き上げなきゃいけないの。でも、あたしの視力はどんどん落ちてきてて」  ぽつん、とスケッチブックに涙が落ちた。水に浸した時とは違い、その雫はなかなか乾かなかった。  どう声をかければ良いかもわからず、俺は黙ったまま俯いた。 「12月3日。流星群が見えるはずなんだ。それが最後のチャンス。ねえ、手伝ってくれる?」  ステラは俺の顔を覗き込んだ。蒼い瞳はどこまでも澄んでいて、この目が見えなくなるだなんて俄には信じられなかった。  彼女の目を見つめて、俺は頷いた。 「……俺にできることなら」
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