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Ⅴ
そして、12月3日の明け方。
「……やっぱり無理だ」
ステラはもう100枚以上の絵を描き、俺もその度に魔法を使おうとした。しかし、何をしても彼女に俺の視界を共有させることはできなかった。
「ごめん、俺のせいで……」
「ううん、ごめんね。あたしこそ3日も付き合わせちゃって。自分の目で見て描けってことなんだろうし」
ぎゅっと唇を噛み締めた彼女の横顔には、悔しさが滲んでいた。自分の魔法は、何の役にも立たない。俺も歯を食いしばって俯いた。
ふと、幼い頃に出て行った、体の弱い母親を思い出す。母は俺の魔法のせいで、家を出て行かざるを得なかったのだ。
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