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「…まだ?」
「んー、もう少し…」
そう言うと、彼女はまじまじと鏡を見つめビューラーを片手に慎重に睫毛を挟み始めた。うっすらと口が開いている。
こうなるともう、話しかけても返答はない。
ふぅっと一つ、短い息を吐いた俺は手元のスマートフォンに視線を落とした。
たいして興味もないネットニュースは今日も新型ウイルスの話題で持ち切りだ。
「ごめんごめーん、おまた…あ!」
俺がいるリビングへパタパタと駆け寄ってきたかと思うと、彼女は途中何かを思い出したようにくるりと踵を返した。
「今度はなに」と、体勢はそのまま横目で彼女に視線を向ける。何やらアクセサリーボックスの中をゴソゴソと漁っている様子だが…。
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