23人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女も寒がりだったな。
そう思い、ふと自身の足元に視線を落とす。
何をしても、どこにいても、彼女の存在が脳裏を過る。
言葉が、笑顔が、面影が…。いつもいつも、俺を優しく包み込んだ後に、決まって暗く深い闇の中へ突き落すのだ。
「疲れた……な、」
ボソッと、自分にすら聞こえないくらいの声で、俺はそう呟いた。
もう、疲れた。
毎日毎日彼女を想うことも、忘れようとすることも、過去を振り返ることもこの先更新されない思い出に涙を流すことも。
全部全部、疲れた。
もう少しで、電車が来る。
一歩、また一歩と、俺は引きずるように足を前へ動かした。
最初のコメントを投稿しよう!