文学的帰納法

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 一年生の浅芽が優秀作品に選出された、先月の文学コンテスト。  入部して二年近くが経つ俺はというと、今回もやっぱり箸にも棒にも引っ掛からなかった。  どうせ、出す前から予想がついていたことではあるけれど。  俺と同時期に入部したはずの二年生たちは、既にみんな一度はコンテストで受賞している。  それに、文芸部開設以来の天才と目される浅芽をはじめ、最近は一年生だってなんらかの形で活躍することが増えてきた。  在籍中の部員で未だになんの結果も出したことがないのは、今となっては俺だけだ。  ここまでくるともう、いい加減わかってきた。  自分には、文芸の才能はない。  体を動かすのは面倒だし、かといって文化系の部活で興味が持てるものも特になく。なのに両親がなにか部活に入れってうるさいから、仕方なく消去法で入ったのが文芸部だ。  もうこれ以上続けても無駄に決まっている。  二年生の冬にもなり、そろそろ大学受験の準備も進めるべきだ。  結果の出ない部活をいつまでもだらだら続けている場合ではないだろう。  部室の鍵を閉めた俺は、そのまま顧問の居る数学準備室へと向かった。    退部届の良いところは、書くために文才を必要としない点だ。  
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