キミのとなり、365日

ようやく文化祭が終わった今日、実行委員のお仕事で学校に残っている陽ちゃんが帰ってくるのを待っていた。先週からずっと一緒に帰れなかったから、話したいことがたくさんある。

なにから話そうかと考えては笑みが零れ、時計を何度も見てはソワソワしていたけれどー。

「陽ちゃん、遅かったね．．．」

彼が帰宅したのは19時を回っていて、ベランダに姿を現したのもいつもより随分と遅かった。

「あー、悪い」

「そんなに遅く残らないといけなかったの？」

「まぁ．．．．．．それもあるけど」

身を乗り出すようにしてみても、どこか歯切れの悪い言い方をする陽ちゃんの顔がよく見えなかった。いつもは近くに感じられるのに、今日はどこか彼が遠い。

「陽ちゃん？」

静かなベランダに私の声が落ちると、壁越しに小さな深呼吸が聞こえてきた。

「菜々」

「．．．．．．なに？」

「話がある」

真剣な声音に思わず返事が遅れたけど、陽ちゃんは間髪を入れずにそう言った。程なくして目があった彼は、いつになく戸惑いを孕んだような複雑な表情をして、一瞬にして全身が緊張感に包まれた。