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メンバー集め編 天才登場!?
激しい爆撃は雨のようで、弾幕を切り抜ける様は風のよう・・・
「嗚呼、愛しの君よ!何故、このような輩をパートナーに?」
争いは時に、愛故に起きるべくして起きるモノ。
「何で、何でこんな事で争わなくちゃいけないんだ!?」
悲痛な俺の叫びに聞く耳も持たず、戦いは加速する。
「仕方がないのよ・・・人間は所詮、獣。譲り合いの精神なんて本能に蓋をした偽りの姿!」
嘆くような台詞と共に刀を抜く真抹茶丸と対峙するのは・・・騎士を思わせる出で立ちをした白銀のボット『ディスティ』アイカメラはゴーグルタイプ。
青いマントを翻し、細長い円錐状の槍・・・ランスを両手で構え迎撃体勢に入る。
「奪い合い!憎しみ合い!果てに深まり合うのが、愛!」
ディスティのバトラー『ダイ』の叫び声が戦場に谺する。
バリポリバリバリ!
割って入るスナック菓子を貪り食らう咀嚼音・・・主は猫さん。
「はーい、やるならさっさと済ませてくださーい」
あくびにも似た声が緊張感に水を指す!
「ハルオさんは僕にこそ相応しい!この出会いこそが天命なんだよ!」
「ハルオの所有権を持つのは未来永劫、私のみなの!厚かましく割り込んでくるな!」
真抹茶丸の刀とディスティのランスがぶつかり合い、火花を散らす。
そう、2人が争う火種は・・・俺の取り合い。
「何で、こうなった?てか、こんな事で争わないでー!?」
バリバリバリポリポリボリボリ!
悲痛な叫びは、猫さんの咀嚼音にかき消された。
数十分前に遡る。
「なかなか、良い人と巡り合わないもんですねー!」
「私たちより先に撃破されちゃったり、別行動されると実力の計りようが無いわね~」
まぁ、こうなるだろうとは思っていたが・・・予想通りの展開だ。
「専用掲示板とかで募集した方が早くないか?」
「それじゃ、実力が分からないじゃない。浅はかだねーハルオは」
なんか、バカにバカにされるのって胸が苦しくなるんだな。
クランメンバー探しの為、fullteamでマッチを回し続けるも、サリーの御目がねに叶うバトラーは今のところ居ない。
「次のマッチでラストにしますねー!明日、会議あるので早起き必須なんですよー!」
会議かぁ~猫さんはガチで企業の役職者なんだな。自分のうだつの上がらなさが情けなくなってきた。
さて、今回の野良バトラーはどんな感じかな?
「初めてまして、凡人諸君!天才バトラーダイ・・・見☆参」
濃ゆいのキター!?
「初めまして、美少女天才バトラーサリーです。夜露死苦」
張り合い出したよ・・・
「ほぅ、自ら天才を名乗るとは・・・とんだ自信家がいたもんだ!フハハハハ!」
リアルにフハハ笑いする人、初めて見たかも。
でも、なんか・・・嫌いじゃないかも、こういうタイプ。
「俺はハルオ、機体はゲイボルグ 軽量タイプだ。宜しくな、天才君」
「猫ライダー、機体はフンジャッター 重量タイプです!宜しくお願いしまーす!」
「あ、はい。宜しく・・・下々の者たちよ!僕の機体はディスティ、汎用タイプだ!」
薄い反応からの急なハイテンション、何か違和感あるな・・・普通に喋ると、なかなかの※イケボなのに勿体ない。
※イケメンボイス 聞くだけで整った容姿を連想させる。
実力を計る前に撃破されないように、激戦区を避けて降下する。
どうやら、この中都市はフリーだな。物資を漁りながらダイ君とコミュニケーションを取る。
「ダイ君はボッバト暦長いの?」
「ざっと1年ほどで・・・だ!」
何か、無理してキャラ作っているような・・・何か事情があるのだろうか?
「ダイ君、何か無理に虚勢をはってるように見えるけど・・・初めて組む同士だし、もう少し気楽にやろうぜ?」
「気楽に?」
「あぁ、でも接敵したら頼りにしてるぜ?天才っぷりを見せてくれよ」
これで上手くなかったら、ドンマイだが・・・それはそれで可愛げがあって微笑ましい。
「ハルオさん、でしたっけ?」
「ん?あぁ、そうだよ」
「ハイ、頑張ります!」
「お、おぉ・・・」
急にキャラが好青年風になったが、多重人格設定か?
「あんた、キャラ定まらないわねー!」
「五月蝿い、アバズレ!入ってくるな。僕は今、ハルオさんと話をしている最中だ」
刀を抜こうとしている真抹茶丸をフンジャッターが止めに入る。
「ハルオさん、聞いて下さい!」
「お?おぉ・・・」
ダイから聞いた話をまとめると・・・腕をかわれてクランに誘われた彼はクランバトルで活躍した。
試合数も多く、同世代のメンバーからも一目置かれ、リーダーからも信頼される存在になった。が、古参のクランメンバーには『ポッと出』と呼ばれ良く思われていないらしい。
嫌われまいとへりくだった態度をとると嫌みと汲み取られ、自信家なキャラを演じてみたら調子に乗ってると叩かれ、リーダーからも自重するように諭されたと言う。
メンバーが多いクランは人間関係がややこしそうだな。
「君の実力が本物なら胸を張っても良いんじゃないかな?ただ、自信家キャラを無理に演じる事は無いよ。本当に強い人は人を見下したりしないもんさ」
「ありがとうございます、何だか少し気持ちが晴れた気がします」
そう言いながら、ディスティはランスを有らぬ方向へ向ける。
槍先が左右に開き、銃身が顔を出すと同時に発砲!
遠くでヒットエフェクトが発生し、ディスティはそのまま銃撃を続けた。
ディスティ→ハンマーバッキィ
撃破ログが流れ、一同唖然となる。
いつのまに敵機を捕捉したんだ?しかも、雑談しながらサリーより先に気付くなんて・・・マジで天才なのか?
それに、この武器は・・・ガンランスか?武装同士を合成するシステムで※複合というのがあるが、複合によってできた武器は両手持ちになり、弾数が少なくなったり単純な足し算で計算した重量より若干重くなる仕様なので結局、左右に武器を持ったりバックパックに収納した方が効率的という考えがポピュラーだが・・・あえてそれを使っているのか?
※複合 様々な武装を合成し、複数の効果を持った武装を開発するシステム。
銃器+近接武器等々、様々な物を合成する事ができるが、必ず両手で使わなければならなくなったり重量が重くなったりするデメリットがある。
例 アサルトライフル重量5+ブレード重量3を複合=銃剣の重量は9・・・等
ディスティの武器を分析している最中、ダイに声を掛けられた。
「ハルオさん、S方向見て下さい」
言われた通りにすると、離れたところに敵機発見!
「そのポジションから狙いやすいハズです。やれますか?」
確かに、起伏があるおかげでこちらからは狙いやすいが敵からは見えていないようだ。
「了解、やってみる」
この距離ならアサルトライフルでフルオート射撃するよりマークスマンライフルで狙撃した方が良さそうだ。
SRを密かに練習している成果もあり、数発ヘッドにヒットした。
あと1~2発当たれば倒せそうだったが、銃声に気づいた僚機が姿を現した。
しかし、その僚機はディスティのガンランスによる銃撃を受けて動きが止まった。
すぐさま移動し射線を変え、先に当てていた機体を追撃し撃破!
ゲイボルグ→レッツカイオー
ディスティ→ドツボオロチ
ディスティも撃破に成功し、一気に2体撃破に成功!
「距離を考え、すぐさま武器を変更して狙撃するとは素晴らしい!ハルオさんとは、初めて会った気がしないですね!こんなに自然と連携できたのは、初めてかも知れません」
「いや~それ、俺も思ったわ。てか、ダイ君の指示が上手いんだと思うぜ?オーダーとか向いてるんじゃない?」
などと話していると、残る1機を捕捉した真抹茶丸がライフル狙撃で撃破する。
真抹茶丸→ハナカオルマーヤ
「ハイハイ、上手にできましたね~息があってましたね~良かったですね~」
ご機嫌斜めなサリーを無視してダイが話を続ける。
「ハルオさんって、とても話やすくて安心感ありますね!狙撃もしっかりヘッドを意識していて上手ですし、良かったら後でフレンドに・・・いや、パートナーに!」
「ハァー!ちょっっっと待ったぁー!」
サリーのちょっと待ったコールから、2人の言い争いが始まった。
しかも、このエリアは※爆撃の真っ只中だ!
※マップ上にランダム発生する大ダメージゾーン、一定時間で消えるが直撃するとほとんどの機体が一撃で撃破となる。
雨のような激しい爆撃、2人の撃ち合いに巻き込まれた俺は流れ弾を必死にかわす!
蚊帳の外に置かれた猫さんは、ひたすらお菓子を食べるだけ。
撃ち合いから互いに距離を詰め、接近戦を始めようとしたところで偶然なのか必然なのか、見事に爆撃が俺たちに命中!
そして・・・激しい爆発音と共にゲームオーバーの文字が画面いっぱいに表示された。
空爆→ゲイボルグ
空爆→真抹茶丸
空爆→ディスティ
空爆→フンジャッター
マッチが終了し、ロビーに戻る。
「なんなの、アイツ!泥棒猫ならぬ泥棒ナイトよ!」
憤慨するサリーを尻目に、俺はダイからのフレンド申請を了承した。
「あんなアバズレのどこが良いのか理解できませんが、今日のところは諦めます」
ダイのメールに対して、俺は丁重に返信する。
「パートナーの件は、申し訳ないけど断らせてもらうよ。でも、もし今のクランが居心地悪いなら俺のクランにおいで」
「・・・わかりました。考えてみます。また、遊んで下さい」
妙に気に入られてしまったが、悪い気はしない。
それに、確かな実力者だったし俺たちならダイの居場所を作ってあげられるような気がした。
「次会ったら・・・今度こそ、刎ね飛ばしてやるわ!」
まぁ、サリーと和解できたらの話だが・・・それはそうと、あのまま同士討ちを続けたらどうなっていただろう?
汎用タイプでガンランスだけの武装って事は無いよな・・・ディスティには、まだまだ何かありそうな気がする。
もし、クランバトルでダイと戦う事になったら・・・間違いなく苦戦を強いられるだろう。
折角フレンドにもなれたし、できれば敵に回したく無いな。
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