ソレは突然の出来事だった。

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ソレは突然の出来事だった。

ステージはグリーンシティ・・・ボッバトの初期からある定番のステージで、大都市・中都市・小都市・山・森・砂浜・浅瀬で構成されている広大なステージだ。 出撃前にマップを開き、降下地点を相談して決めるのがfullteamの基本だ。 俺と同じ軽量タイプの機体名は『プルガリオ』バトラーネームはアレイスタ。 汎用タイプの機体名は『ペガサス』バトラーはセイヤ・・・2人とも趣味が出てるな。 ちなみに、俺のバトラーネームは本名のハルオで登録している。普通、こういうゲームで本名を使う人は少ないようだが、良いのが思い付かなかったし変えたら変えたでフレンドに「名前変えました」って報告するのも面倒くさい。 プルガリオの装備はサブマシンガンの二丁持ちで、バックパックにショートソードという構成だ。 近距離で威力の高いウージータイプと中距離でも威力が期待できるMP5タイプを使い分けるスタイルのようだ。 軽量タイプは腕も細いので、フルオート武器(攻撃アイコンを押し続けると連射できる武器)の反動制御が難しく、色々と工夫が必要なのだが、サブマシンガンはフルオートのアサルトライフルと比べると1発の威力は低いが制御しやすいので軽量タイプとの相性は良い。 ソード系の武器は上手く決まれば大ダメージを期待できるが、接近戦闘のリスクを考えれば俺ならチョイスしない。 俺は距離を保つ事を最優先に考えているので、武器では無くスモーク弾を装備している。 スモーク弾は発射後に煙幕が発生し、撹乱したり退避する際に役立つ。 機体は悪魔っぽい角を生やしたデザイン、薄紫のカラーリングに2眼タイプのアイカメラでなかなかカッコ良い。 ペガサスは白と赤のカラーリングで、アイカメラは1眼タイプ。 ヘッドは馬を連想させる形状で、バックパックに翼のような形のシールドをあしらえているのが印象的だ。 シールドは良くみると、ジョイントアームという腕のように動くパーツと繋がっている。 場合によっては、シールドを構えながら攻撃したりもできるのかも知れない。 しかし、シールド2枚は必要無いだろう。 片側に予備の武器やバックパック専用武器をつけた方が実戦的だと思うが・・・きっと、見た目に拘った結果だな。 装備は大口径アサルトライフルとブレードというシンプルな構成。 ちなみに、俺のアサルトライフルは中口径で威力はサブマシンガンに勝るが大口径には劣るタイプだ。 大口径の方が重量があり威力は高いが反動が大きいので、軽量タイプの細腕だと制御が難しい。 アサルトライフルやサブマシンガンは片手でも扱う事が可能だが、片手撃ちより両手撃ちの方が反動制御はしやすい。 プルガリオのように最初から二丁持ちしている場合は、どちらかの武器をバックパックに収納しなければ両手持ちでの銃撃はできない。 かわりに、武器を切り替える際のタイムラグが短いので質より量で攻めるなら片手撃ちの方が良い。 より精度の高い銃撃をしたいなら両手持ちでしゃがみ撃ちすると、かなり反動が少なくなる。 しゃがむと移動速度が遅くなるが、狙い撃ちしたい時はオススメだ。 格闘タイプの機体は『抹茶丸』バトラー名はハングル文字で読むことができない。最初から用意されているサンプルボットを緑色にしただけの機体・・・武器はプロフが非公開になっていたので詳しくは分からないが、腰に刀を装備しているのが見える。 本来、武器は手に持つかバックパック左右にしかつけれないが刀だけは腰につけることができる・・・が、結構重量があるので実質バックパックを1つ使ってるような感じだ。 某アニメの影響で、この武器をチョイスする年少バトラーが後を断たない・・・首や腕を一撃で斬り飛ばせるクリティカル性能こそ高いものの、リーチは西洋ブレードより短く使いこなすのは難しい。 恐らくは、まだ子供・・・しかも、初心者だな。 低ランクのアリーナバトルか何かで、そこそこ撃破して調子に乗ってfullteamモードにやってきましたみたいな感じだろう。 「降下航路は接敵率が低い中都市が多く、万が一の時は身を隠しやすい森エリアがあるパターンBが良いと思うのですが、どうですかね?」 機体を降下させる輸送空母の航路は通常3パターンあり、狭いマップだと2パターンとなっている。 各チームはランダムに決められた航路の中から1つ選ぶ事ができるシステムだ。 アレイスタがチャットで返信「異論無し」 「僕もOKです」 セイヤも賛同してくれたので、これで決まりかと思ったがハングル小僧が茶々をいれる。 「激戦区いかねーのかよ!ヘタレども」 アレイスタがチャットで「1人で行け」と喧嘩腰で返答し、待機時間は終了・・・空母が動き出す。 「お前ら、これ戦うゲームだぜ?接敵にビビってどーすんだよ?」 そう言い残し、謎のハングル君はマップ中央の激戦都市に降下していった。 「うわぁ~3チームくらい降下しましたよ?」 セイヤは少し嬉しそうな声でハングルの降下した激戦都市を見下ろしている。 「自分、ポイントマイナスくらいたくないので宜しくお願いします」 と、アレイスタのチャットが表示された。 俺たちも中都市に降下し、まずは敵チームと被ってないか索敵をする。 「西側索敵OK・・・どうやら、フリーみたいですね」 「南側もOKですよ」 「北側クリア」 4人居れば東側も見てもらえるのだが、とりあえず各自クリアリングした方角に向かい物資の確保に動き出す。 ボッバトはマップによって違いはあるが、1マッチ30分前後となっており徐々に安全地帯が収縮していく。 安全地帯外は青くなっていき、入ると機体の耐久値が徐々に減っていってしまう。 バトルロイヤルゲームでもあるが、サバイバルゲームの要素もあるので生き残る為にもマップにランダムで散らばっている物資・・・追加装甲、耐久値を回復させるリペアキット、弾薬等を集めなければならない。 追加装甲を集めると見た目は変わらないが、ダメージ軽減率がアップし撃破されづらくなる。沢山集めるとレベルアップし、最大でレベル3までアップさせる事が可能だ。 レベル1なら30%、2なら40%、3で50%となる為、格段に自機の撃破率を下げる事ができる。 「ここにリペアキット中あります」 俺の呼び掛けに反応してチャットが返ってきた。 「ありがとうございます。マーキングよろです」 マーキングしておくとマップに表示され、誰かが物質が取ると消える仕組みだ。 いざ、戦闘になってから「回復無いから動けません」なんて事にならないように物質情報を共有しておいた方が効率的だ。 リペアキットは大、中、小とありタイプ事に持てる量に違いがある。 軽量タイプなら、それぞれ1つずつしか持てないが重量タイプは大は2、中は3、小は4まで持てるので僚機にリペアキットを分け与えたりする事も可能。 使用すると救急箱から手と足が生え、小型ボットに変形し修理を行い機体の耐久値を回復してくれる。 耐久値の回復は大きさによって異なり、頭部や腕が破損している場合も修理してくれるのが嬉しい。 見た目や動きも可愛いので、ボッバトのマスコット的な存在だ。 弾薬は使用武器の弾数をアップさせたり補充できる。 弾薬に関しては武器事に数値がことなっておりアサルトライフルなら+30、スナイパーライフルなら+1といった感じだ。 物資を集めながら索敵し、安全地帯を確認して次の目的地に移動するのが一般的な動きである。 「あ、撃破報告流れ出しましたね」 セイヤの声を聞き、俺も撃破報告のログを確認する。 撃破した機体と撃破された機体の名前が表示されるのだが・・・マジかよ? 抹茶丸→クレジット 抹茶丸→ペイペーイ 抹茶丸→エディー 抹茶丸→アイディー ハルグル先輩、めっちゃ撃破してるー!?マジかぁ・・・口だけ小僧じゃなくてガチ猛者だったんですね。 「ちょ、ハルオさん抹茶丸の人、ヤバくないですか?」 セイヤ同様、俺も驚きを隠しきれない。 「そうッスねぇ・・・合流も考えときますか?」 するとアレイスタのチャットが表示される。 「勝手にやらせとけば良いんじゃないですか?暴れてくれれば、※ヘイトも向くしチーム順位もあがりますし」 ※この場合は優先的に狙われやすくなるという意味。 どうやら、合流したく無いらしい。 ヘイトが向いた僚機と合流しようとしてトバっちり受けるなんて事もアルアルだし、アレイスタの意見を聞いておくのも手かな? 「だ、そうですよ。セイヤさん」 「撃破数も稼ぎたいですからねぇ。抹茶丸の人がヘイト集めてるなら、狙いに来た敵機を・・・」 なかなかセコい事を考えてるな。 探索を続けていると、アレイスタからのチャットが表示された。 「ところで、皆さんは何本指ですか?」 あ~初対面でコレ聞いてくるやつ、正直苦手だなぁ。 「俺は4本でプレイしてます」 とりあえず、答えておくが・・・こういったゲームで指を多く使えるとコントロールが多彩かつ、より無駄が無い動きに繋がってくる。 指の数=絶対的なレベルの差・・・では、無いが多く使えるに越した事は無い。 「僕は6本です」と、アレイスタからチャットが来たので「へぇ~スゴいですね」と適当に返事をしておく。 こういうヤツは、指の数でマウントとりにくるタイプが多いんだよな。本来、こういう話はフレンドになってから「操作上手いッスね!指、何本?」って感じで、自分から言うもんじゃ無いと思う。 会話に入ってこないところを見ると、セイヤは2~3本でプレイしているのかな?まぁ、これもオンラインバトロワあるあるの1つだ。 そう思った瞬間、セイヤが探索していたエリアから突如爆発音が鳴り響いた! 「て、敵機だ!早くカバーに来てくれ!コイツら、どこに隠れてやがった!?」 よほど焦っているのか、セイヤの口調が荒くなっている。 「コイツらって、フルパ(4機)ですか!?」 「いいから、早くこいよ!っ、クッソ!!」 複数の銃撃音と共に画面に撃破ログが流れる。 土竜01→ペガサス セイヤがやられた・・・つまり、無理に敵のいるエリアに行く必要が無くなった訳だ。できれば、セイヤから敵の情報を入手したい。 「セイヤさん、間に合わなくて申し訳ないです・・・敵のタイプ、わかりますか?」 返答が無い・・・画面に表示されているバトラーネームの色が黒くなっている為、さっさとチームを抜けて次のマッチにでも行ってしまったようだ。 撃破された後も、僚機をサポートできるように観戦機能がついているが野良チームの場合は大概、自分が撃破されたら抜けてしまう。 「アレイスタさん、ここは様子見しませんか?突然やられたってことは芋格闘か奇襲タイプです。こちらから攻め込むのはリスク高いかと」 アレイスタのチャットが返ってくる 「撃破ログと、セイヤさんの声から察するに奇襲タイプでしょうね。土竜01ですから02もいる可能高いかと」 なかなか冷静だな、アレイスタ。フレンドになりたいとは思わないが、話が通じるタイプで助かった・・・今回のバトルロイヤルモードは13チームが参加している。 残り機体数は31機・・・今、撃破されるとチーム順位は7~8位くらいか?ベスト3に入らないと、大したポイントは貰えない。 「では、一旦退きましょ・・・う!?」 レーダーマップに表示されているアレイスタのマークはセイヤが撃破されたポイントに向かっているじゃあないですか! 「ちょ、アレイスタさん!?」 「ヤツが4機も撃破してるんだから、このマッチのバトラーランクは、たかが知れてます」 アレイスタのチャットは明らかにハングルを意識している。 自己顕示欲が強いヤツは、本当に苦手だが・・・やるしか無いか。 「カバー行きます」 たかがゲーム、されどゲーム・・・一期一会となるだろうが縁あってチームを組んだからには見捨てて逃げるなんてダサい真似はできない。 稲妻のように敵を貫く、ゲイボルグの力を示してやる!
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