だって、つまんないんだもん

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だって、つまんないんだもん

月曜日、俺は公休だ。 更に言うと、明日も休みで連休だ! 昨夜もサリーと一緒にプレイしたが、もう今シーズンのランクポイントは気にしない事にした。 調子が良ければ、後半まで生き残る事はあるものの大概は俺が先に撃破されて観戦モードに突入する。 ほとんどのマッチでサリーが勝ち残りWINNERになるが、予想以上にヘイトを買ってしまい敵同士が結託したかのような攻めをされると流石のサリーも捌き切れず撃破されてしまう場面も数回あった。 それでも、実質1対5で残り2機まで追い詰めていたのだから、やはり化物だ。 ボッバトにログインして、バトルポイントを確認する。まぁまぁ、貯まってきたな。 ポイントといっても、ボッバトのポイントは2つあり1つはランクアップに関係するランクポイント(RP)もう1つは買い物に使うバトルポイント(BP)だ。 どちらも戦績によって増加するシステムでRPは戦績不振が続くとダウンする。 RPが一定数あがるとバトラーランクがアップし昇格するが、マイナスが続くと降格してしまう。 サリーとプレイしていて1番感じるのは、撃破に対する意識の差だ。 サリーとこのまま戦い続けるなら、撃破する力をつけないとRPは上がっていかない。 「今のゲイボルグだと、生存力はあっても撃破力が無い。コンセプトを変えるか、タイプそのものを変えるか・・・」 独り言を呟きながら、機体の装備等を変更する格納庫画面を見つめ続けていると・・・メールを1通受信した。 それは運営からのメールだった。 ふむふむ・・・近々、オートボットシステムという新しいシステムが導入されるらしい。 自分の機体にオートボットシステムを搭載させると、行動パターンを学習させ一緒に戦ったり対戦相手にできるようだ。 ただし、格納庫の拡張が必須らしい。 課金orBPで格納庫を拡張すると、使えるボットが1機増やせる。 俺は軽量フレームのゲイボルグ一筋だが、大概のバトラーは2機くらいは所持しているものだ。 最大で4機まで所持できるのだが、拡張に必要なBPが結構高い。 正直、拡張するより武器やパーツを増やすのにポイントを使った方が有意義だと思う。 だが・・・オートボットシステムを使って今のゲイボルグをコピーして対戦すれば、自分の悪いところも発見できそうだ。 なるほど、運営さん・・・間接的に拡張枠に金を使わせようって魂胆ですね? この、商売上手が! とりあえず、オートボットシステム自体にポイントが必要になるかも知れないので拡張するかどうかの決断は後々にしよう。 運営様からのメールで脱線してしまったが、どうすればもっと撃破できるようになるのか? まずは技量だな。技量と言っても、ボッバトの場合は他のゲームより幅が広い。 銃撃のエイム力(的を正確に射撃する力)、ボットを思い通りに動かす操作力、回避や攻撃に影響するブースト制御力・・・あとは判断力や索敵力も重要だな。 反応速度や反射神経といったモノは年々、衰えを感じているのでソコは割りきって考えよう。 軽量タイプの最大の利点は移動速度だから、ブースター設定を調整してみるか? Newtubeなんかで『これが軽量タイプのブースター最強設定』とか動画が上がってたりするが、操作に使う指の本数だったり配置によっては真似できないモノも多々あり俺は結局、いまだにディフォルト(初期設定)のままだ。 イメージは・・・より、サリーのカバーに早く行けて自分の戦いやすい距離をキープできる動き。 ん~今、何か思いつきそうな感じがしたんだが・・・いまいち、ピンとこない。 ブースター設定なのか? なんか、違う気がする・・・そもそも、サリーより撃破できるようになるのは難しい訳だが、サリーみたいに撃破できればWINNERになる確率は上がる訳で、サリーの撃破をサポートするコンセプトだとサリーみたいに撃破できない訳だよな? 理想はサリーみたいに撃破もできて、サリーをカバーできる事だ。 つまり・・・俺の憧れの白夜叉神のレイナさんみたいな機体が答えなんじゃないか? 「・・・スナイパーライフル」 俺はすかさず、ショップ画面に切り替えようと顔を上げた。 ん? フレンド欄が光ってるな・・・今は、まだ午前10時だが俺みたいな公休社会人フレンドがログインしたのかな? サリー アリーナモードプレイ中 あ、今日って祝日?じゃないな、ド平日だ。 だいぶ前に読んだゲーム雑誌にサリナのプロチーム除名は高校受験が主な理由みたい記事を読んだ記憶がある。 なので、勝手に女子高生だと思っていたが・・・実はフリーターなのか? ん~気になるなぁ。終わったら確認してみるか? と、考えてる矢先にサリーから招待が届いた。 「よぅ、ハルオー!今日はログイン早いじゃん?ははぁ~ん・・・さては、私に会いたくて早めにインしたパティーン?」 クソテンション高いな・・・今日はボイスチェンジ使って無いのか。 「まぁ、それはそうと・・・Are you 女子高生?」 「Yes I am 女子高生・・・ハッ!?」 「お前は謀ったなハルオ、と言う」 「謀ったな、ハルオ!」 「学校サボってゲームしてんのか?」 バツが悪そうな感じでサリーは答えた。 「ハイ、ワタシガッコウサボリマシタ」 何で片言? 「説教するつもりは無いが、学生の本分は勉学だからな?なんでサボったんだ?」 「だって、つまんないんだもん」 「つまらなくても、成績下がったら親御さんにiPadとりあげられるんじゃないか?」 すると、サリーのアバターがドヤ顔エモートをしやがった。 「それに関しては、全くもって問題無いんだお」 出たな、だおキャラめ。何を寝ぼけた事を言っとるんだと思っていると、なにやら画像が添付されたメールを受信した。 これは、期末試験の順位か? 「はぁ!?学年順位3位だと!?」 「美少女!成績優秀!ゲームも上手い!三拍子揃っちまったスーパースペシャル女子高生こと、沢尻 サリナちゃんなんだおー!」 フルネームをバラしてでも自慢したかったのか? 「沢尻さんが成績優秀なのはわかりましたが、学校サボってゲームするのは良くないと思います。親御さんには仮病使って休んだのか?心配かけちゃイカンぞ?」 「・・・私の事を心配する親なんて、いないんだお」 声のトーンが暗くなった、もしかしたら触れちゃいけないところだったか? 「事情があるなら、無理に話さなくても・・・」 「パパは私が小さい頃に病気で死んじゃって、ママはアルコール依存性で酒買ってこないと殴るんだお」 マジか・・・ 「ママに殴られて、子供の歯が抜けたこともあったお。お腹を蹴られて入院した事もあったなぁ」 旦那さんが死んで、子育てに疲れたとか理由があるのかも知れないが最低の親だな。 「すまん、もう無理に話さなくて良いぞ」 「だから、お姉ちゃんが沢山バイトして養ってくれてたんだお。でも、お金はママがお酒に使っちゃうから2人で家を出て、しばらくはお姉ちゃんの親友の家にお世話になってたんだけど・・・」 だけど? 「そこで才能が開花したのだ!!」 急にデカイ声出しやがって、ビックリするじゃねーか!? 「お姉ちゃんの親友のお兄ちゃんがプロゲーマだったんだけど、遊びでやらせてもらったのがボッバトだったんだお。最初は私もお姉ちゃんも下手クソだったけど、数回やらせてもらったらコツが掴めてきて、お兄ちゃんにも勝てるようになったのだお・・・ドヤ!」 結局、自慢話になってしまっているのがシャクだが俺が思っていた家庭環境とは全然違っていた。 良いとこのお嬢様みたいなイメージがあったが、現実は酷い・・・てか、レイナさん凄い人だな。 妹を守る為に、色々と苦労してたのか・・・金が必要だからプロチームを抜けてボッバトの運営チームに入ったのが事の真相って訳か? 「・・・明日は学校行くよ」 「急に話が戻ってビックリしたが、まぁ・・・学校に友達とかいるんだろ?」 「いない」 また地雷踏んでもうたー!? 「私、あんまり学校行ってないのに成績良いから嫌われてるみたいで、挨拶しても無視される。女子高だから、美貌も妬まれてるに違いないわ」 所々、引っ掛かる点はあるが・・・才能がある人間は必ずしもチヤホヤされるモンじゃないよな。妬み、嫉みもついて回る。 「まぁ、あれだな。学校に友達なんていなくても大丈夫だ。サリーには俺がいる訳だし、な」 「ハルオが・・・友達?」 「フレンドだろ?それとも、オッサンとは友達になりたくないか?」 「へへへっ、ハルオは友達かぁ。てか、ハルオってそんなオッサンなの?」 「まぁ、30代半ばってとこだ」 「濁す必要なくない?声が若いから、20代後半くらいかと思ってたわ」 「まぁ、そんな事よりボチボチちゃんとやろうぜ?」 「ちゃんとやろうって何を?」 「ボッバトは敵機を撃破するゲームだろ?お話するゲームじゃないんだから、行こうぜ」 今日も俺はサリーと戦場を駆け巡った。
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