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プロローグ
巨大なモニターに映し出されたロボットたちが激しく戦い、銃声と爆発音が絶え間なく鳴り響く。
画面狭しと動き回り、様々な武器を駆使して戦う数多のロボットの中でソレは異質な存在だった。
近未来的なシルエットでもなく、ミリタリー感漂うデザインでもない。
敵機の放った無数のミサイルをすり抜けて、ソレは日本刀を模したブレードを振り抜き敵機の首を刎ね飛ばす!
黒光りする外装、鬼面の頭飾り(立物)・・・その姿は、戦国時代からタイムスリップしてきたかのような鎧武者の出で立ちで、観客たちを釘付けにした。
フェイスパーツの※面頬の奥で2眼のアイカメラが赤く光る様は、血に飢えた獣を連想させる。
※顔を守る防具
その姿からは想像もつかない可愛いらしい少女の声が威勢良く戦場に響き渡る。
「さぁ、次に刎ねられたいのはどちら様?」
煽り文句が観客たちを熱狂させ、対戦相手たちに戦慄を走らせた。
調子に乗るな!と、言わんばかりに首を飛ばされた機体の僚機が巨大なハンマーを振り上げて背後から襲いかかる!
が、その攻撃もひらりとかわし鎧武者型ロボットは振り向き様に再び首を刎ね飛ばした。
「こいつ、背後にもカメラがあるのか!?」
サブカメラに切り替えようと操作するも画面が映った時には既に遅く、腰の鞘に納刀した刀の代わりに背中のバックパックから取り外した火縄銃型ライフルが火を吹き機体を撃ち抜く。
様子を伺っていた別チームの※バトラーたちも「こいつは早めに潰さないとヤバい」と結託したかのように攻撃目標を鎧武者に集中させた。
※BOT BATTLER MOBILEのプレイヤー
だが、彼らもバカでは無い。
このマッチは世界大会予選の2on2決勝戦であり、参加しているバトラーは各サーバーを代表して参戦している。
「コイツのパートナーはどこだ?」
次の瞬間、突如として放たれた凶弾が機体の頭部を撃ち抜いた。
レーダーにも映らない遠距離からのスナイパーライフルによるヘッドショット!
モニターには豊和M1500に近い形状にカスタマイズされたライフルを構え、鬼面で顔を覆い白装束のような外装を身に纏う機体が映し出される。
和風テイストの2機は、そのまま次々と敵機を撃破し・・・2on2世界大会予選の勝利チームとなった。
モニターにはWINNER 黒鬼武者 SARINA & 白夜叉神 REINAの名前が映し出される。
表彰式に姿を見せた黒鬼武者のサリナは茶髪にツインテールのパッチリ二重の大きな瞳が印象的な小柄な美少女で、白夜叉神のレイナは対象的に170cm近い身長のモデル体型で黒髪ロングにフレームレスの眼鏡をかけたツリ目のクールな印象を持つ美女だった。
突如として現れた姉妹バトラーに関係者各位、BOT BATTLERファンたちは度肝を抜かれ、一気に話題騒然となった。
様々なメディアにとりあげられ、2人は時の人となる。
また、彼女たちが所属していたプロチームが決勝戦まで隠し球として控えさせていた大胆な戦略も話題となった。
鮮烈なデビューを飾り、1ヶ月後の本選での活躍が期待された・・・が、世界大会第1試合に彼女たちの姿は無くチームは結局1開戦敗退。
様々な憶測がネット上に流れたが、チームの公式ブログには体調不良の為、不参加とだけ書き込まれた。
それから半年後・・・サリナはチームから除名され、レイナはBOT BATTLER MOBILE運営側にスカウトされたという内容がブログに載り再びネット上を賑わせたが、次第に熱は収まり一部の熱烈なファンたちを残し、その存在は忘れられていった。
「あれから2年かぁ~早いもんだな」
そんな内容のNewtube動画を何度も何度も見返しているのが、俺・・・加藤 ハルオである。
ビトーヨーカドーオモチャコーナー担当の中年ゲーマー、中肉中背、白髪染めで黒くした髪は長くも無く短くも無い、当たり障りの無いヘアースタイル。
年々反射神経の衰えを感じているが、ゲームを辞めようとは思わない。
ゲームはボケ防止になるらしいので、死ぬまでやる予定だ。
これから始まるのは、どこにでもいる中年おっさんゲーマーと凄腕女子ゲーマーの物語だ。
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