社長と部下

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

社長と部下

◆ 「……大江! 大変だ! ホームレスのヤツ、金を持って逃げやがった! ……」 「はははは」 コスモグループの社長、六角信長は盗聴器の音声を聞き、手を叩きながら大笑いした。その時、ドアのノックが聞こえたので、音声を止めて対応する。 「どうぞ」 ドアが空き、部下が入ってきて話す。 「失礼します。社長、足を骨折しているホームレスを空き倉庫へ運び終えたようです」 「そうか。橋の下より環境が良いから喜んでいただろ?」 社長は冗談っぽく部下に告げた。 「どうですかね? これからの冬を越すには橋の下よりは良いと思いますが……」 「冬の間、ずっと面倒を見てやる義理もないんだが、のたれ死なれても後味が悪いからな」 「そうですね……。我々としては、信孝君も無事保護出来て最高の結果になりましたね」 「そうだな。信孝も誘拐された時の3原則をきっちり行なえたから褒めてやらないとな」 「犯人を怒らせない。手紙を渡す。盗聴器の設置ですね」 「まあ、犯人に独り言をハッキリ言うヤツが居て良かったよ。最悪、1億円程度取られても仕方無いと考えていたんだが、身代金の隠し場所を教えてくれるなら返して貰う。それより傑作だぞ。こいつ、自分の失敗を棚にあげてホームレスの骨折が演技だとか言っているんだからな」 ◆ 了
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加