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社長と部下
◆
「……大江! 大変だ! ホームレスのヤツ、金を持って逃げやがった! ……」
「はははは」
コスモグループの社長、六角信長は盗聴器の音声を聞き、手を叩きながら大笑いした。その時、ドアのノックが聞こえたので、音声を止めて対応する。
「どうぞ」
ドアが空き、部下が入ってきて話す。
「失礼します。社長、足を骨折しているホームレスを空き倉庫へ運び終えたようです」
「そうか。橋の下より環境が良いから喜んでいただろ?」
社長は冗談っぽく部下に告げた。
「どうですかね? これからの冬を越すには橋の下よりは良いと思いますが……」
「冬の間、ずっと面倒を見てやる義理もないんだが、のたれ死なれても後味が悪いからな」
「そうですね……。我々としては、信孝君も無事保護出来て最高の結果になりましたね」
「そうだな。信孝も誘拐された時の3原則をきっちり行なえたから褒めてやらないとな」
「犯人を怒らせない。手紙を渡す。盗聴器の設置ですね」
「まあ、犯人に独り言をハッキリ言うヤツが居て良かったよ。最悪、1億円程度取られても仕方無いと考えていたんだが、身代金の隠し場所を教えてくれるなら返して貰う。それより傑作だぞ。こいつ、自分の失敗を棚にあげてホームレスの骨折が演技だとか言っているんだからな」
◆
了
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