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スーパーマンボウから出ると、開店からたった5分しかたっていないことに気づく。
「おつかれ、ニラ買えた?」
水筒のお茶を飲みながら花村さんが声をかけてくる。いつの間に取ったのか、エコバッグの中には食パンと豚肉も入っていた。
「なんとかね。走れ、なんて叫ばれて驚いたわ」
「やあね、そんな猫騙しに引っかかるかっつーの」
花村さんが言ったと同時に、自動ドアから先程ニラバトルに負けた主婦が出てきた。キッとこちらを睨みつけ、足早にその場を後にする。
「あれ、松尾さんは?」
「仕事よ、走っていかないと間に合わないって」
「そうなんだ。大変ね」
「鈴木さんは今日おやすみ?」
幸恵はハッとする。時刻は8時36分を回ったところ。今日の出勤は9時。ここからクリーニング屋までは自転車で15分。もたもたしている暇はない。
「私行かなくちゃ!」
慌てて自転車のカゴにエコバッグを入れ、鍵を外す。
「じゃあ花村さん、またね!」
「うん、気をつけてね」
ペダルを一個踏み出して、走り出す。風を浴びる。ああ、ようやく走れる。
「鈴木さーん!」
後ろから花村さんの声が聞こえた。
「いってらっしゃーい!」
幸恵は右手を高く挙げ、背中でその声に応えた。
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