滴が落ち切る、その前に

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   もう少し、甘くて、溢れていたら    もう少し、苦くて、欠けていたら    どうだったんだろう、って、今思ってる。 冬、と言うには物足りない位温かい日差しの、昼下がり。 私、朝倉茉優は、駅近くのコーヒーショップで、ガラス越しに通り過ぎる街の人を眺めていた。 (ノンビリしてて、良いのかな?) ガラスに写る自分の顔、どう見ても受験生ですって緊張感が無い。肌がツルんと、テカテカして、ほっぺは桜餅を食べ過ぎたハムスターみたいにプルプルになってる。 そりゃそうだ、高3の秋に推薦で、それなりに名前を聞く学校に進むのが決まったから。そこからは、「フツーの高3」だ。 京王線千歳烏山駅、私ともう一人の、最寄りの駅。 カウンター席に並んで座る、退屈そうにして「泡を吹いて大あくびをする」カフェラテが二つ、目の前に居る、あいつはまだ来ない、、、来た。 「お疲れ、高野君」 「ああ、早いな、茉優」 (調子良いのかな?) 私は彼の顔を見て、大丈夫だと思ってはいた。 あっちは、本命に受験で向かうって言ってたから心配だった。この前試験で、今日はバレンタインの4日前。まだ合格発表には、時間がある。 ダウンを脱いで席に着く高野君の表情は、自信に満ちている、とは言い切れないけど、この世の全てを恨んでやるって顔ほど追い込まれてる風でも、ない。 その、何となく私を安心させてくれる表情が見えてから、カフェラテに口を付けた、ら、多めに入ってしまった! (どうしよう、甘すぎない、これ!) シュガー抜いてくださいって、注文の時に言ったはずなのに、甘すぎて歯が溶け始めてそうだ! 「ありがと、、、」 彼は、ちょうど良い位の飲み物って顔で、コクコクと飲んでる。 こんなに甘い物好きだったかな?あんまり記憶にない。 並んで座る私たち、日差しは大体顔の下半分に当たる、首元だけ暑いくらい。 「甘すぎ、じゃない?」 「、、、別に、、、薄いくらいだよ、こんなの」 ずっと彼の視線はこっちに居ない、通りの方ばかり向いてる。私はガラスに写る高野君の斜め正面とばっかり会話してる、どこか避けてる自分が居る、正面向いて話す事。 「良いね、甘くて、そっちは」 「ごめん、、、オーダー間違えたかな!と、取り替えて来る!」 「良いよ、飲むから」 「でも、、、」 「飲めるから、良いんだよ、これで、、、」 言葉が裏返ってる、時間は無駄に使われてた。 オーダーから結構時間が経って、穏やかな湯気は消えた。 「帰る、俺」 「あ、ちょっと、、、」 引き止めようとして、体が固まってた。 「好きだよ、甘いのは、俺だって、、、」 重たい足取りで、外に出る彼だった。 カップの歪んだラテが一つ、カウンター席で外を見てる。 中身は、全然減ってなかった。
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