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「阿部さん。今の時期もし私が受験生だったら、うかつに滑るとか禁句ですよ。 ほら、高野さんの所の息子さんとか、今年も受験だから。 今二浪だったかな?」 「あー、実は…さっき高野さんの息子さんここ通って、 なんか急いでて雪で滑りそうになって、その時彼の持ってた鞄が地面に落ちて…。 それ見て思わず俺、あ、落ちたって口に出してしまってた…。 あかりちゃん、どうしよ? 本人に聞こえたかな? そのまま鞄拾って何も言わず通り過ぎて行ったんだけど…」 困ったようにこちらを見るその顔が 本当に子供みたいで、 そんな所に胸がキュンとしてしまう。 「それ絶対聞こえてたと思いますよ。 もし高野さんの息子さんが今年も大学落ちたら、 阿部さんのせいにされるでしょうね」 「えー、本人のせいなのに、俺のせいになんの、それ」 そう言って、苦笑いする阿部さんを見て、私も笑う。 いつの頃からか、 こうやって阿部さんと話すようになった。 通学の為、平日はこの道を通る私は、挨拶から始まり自然と彼と仲良くなった。 彼は今三交代で働いているので、 もちろん毎日会えるわけではないけど。 今迄他のお巡りさんとこんな風に話すようになった事がないから、 彼に惹かれて意識的に私から積極的に話し掛けているのだろうな。 彼を好きだと意識したのは、 話すようになってすぐだった。
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