“噂”

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“噂”

『ねぇ、“式場”って知ってる?』 歩道を歩く女子高生の二人うちの一人がそんな話を相方にしているのが聞こえた。 その内容についつい俺は聞き耳を立ててしまう。 『式場?』 『知らないの?最近噂になってるサイト』 二人の女子高生との距離が近づく。 話の内容がより聞き取りやすくなる。 隣を走る車の雑音など大して気にならない。 『自分が見た悪夢を、体験談みたいに投稿するサイトなんだって』 『へー 何?なんか投稿するの?怖い夢でも見たの?』 『しないしない 誰かが投稿した体験談を読むだけでも楽しいらしいから暇潰しにいいかなって』 暇潰し、か。 まあ捉え方によっては、“そういう目線”で生きている人間は幸せなのかもしれない。 さらに女子高生たちとの距離が縮まる。 『でもちょっと怖いから一緒に見ない?』 『やだやだ それこそ悪い夢見ちゃいそう』 『でもちょっと気になっ……』 そこで俺と女子高生たちはすれ違い、 彼女たちと再び距離が開いていく。 『……ねえ、今の人見た?』 『うん めっちゃイケメンだったね』 ……小っ恥ずかしくなり、足を速めた。 そのまま俺は真っ直ぐ帰路につく。 人気の少ない道に入り、 木々の並ぶ小道を抜けた先の森の中にある洋館へとたどり着く。 門を開け、そのまま玄関へ。 『ただいま』 ここは周りの人たちから見れば不気味な大きい洋館だろう。 住み慣れるとこれはこれで品があって良い。 さて、早速今日の“悪夢”の確認をしなくては…… 俺はすぐに自室へ向かう。 “あいつ”はまだ起きてこないようだ。 荷物をベッドに置き、ノートpcを立ち上げ、素早い手つきでサイトを開く。 サイト名は “式場”(しきじょう)。 悪夢の体験談投稿サイトだ。 俺と“あいつ”はその管理人で、毎日ここに書き込まれた“悪夢”を確認している。 さあ、今日の投稿は……と。
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