ツイッタラー・生田大吾の場合

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ツイッタラー・生田大吾の場合

Time is Moneyというアプリが使えるスマホを購入してからもう二か月。 オレには毎週金曜日に決まってやることがある。 金曜日の午後、仕事中に時間をアプリで早めて業務をスキップし、自分の手で週末を手繰り寄せてやるのだ。 スキップより前に仕事を終えている必要があるので、少し労力はかかる。それでも仕事もないのに上司の目を伺いながらオフィスの椅子に貼り付けになる金曜日を切り上げられるなら安いものだ。Netflixに追加された新しいドラマを早く一気見したい! 本日やるべきことを終えて、アプリを起動する。 「早送り、2時間」 ・・・ 時計を確認して席を立つ。 「お疲れ様でした!」 「はい、お疲れ。あっ、もしよかったら飲み行く?」 「いえ、今日はちょっと。お先に失礼します。」 「じゃ、また来週!」 以前は上司からの飲み会の誘いに対し、今日も無駄な時間を過ごしてしまったと半ばあたるような不機嫌な態度を取ることもあったが、アプリを使い始めてからは笑顔で対応ができるようになった。変わったのは自分なのに、上司の人が良くなったように感じるのは不思議だ。 ◇◇◇◇◇ 結局、日が昇るまでドラマを連続で見続け、夜が明けた。ドラマは本当に面白かったが、どうしたってオールの後は気だるさが残る。2時間くらい睡眠を取って、本格的な眠気が午後にもう一回来て、また眠った。 ◇◇◇◇◇ 昼寝から覚め、感覚的にもう9時過ぎだ、と思ったが時計はまだ7時を指している。 「あれ、まただ。」 こんな生活をしていると、土曜日の昼寝は日常茶飯事なのだが、最近たっぷり寝たつもりなのに時間の経過と一致しないように感じることある。 おもむろにTwitterを開いて、1万人のフォロワーに向けてつぶやく。 『Time is Moneyで時間を早送りした翌日、1日がめっちゃ長く感じるんだけど、分かる人いる?』 「いいね」と「リツイート」が一斉に付き始めた。
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