赤ずきんと新しいおもちゃ

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(のどかな森の中の環境音) 狼  ――今日こそ、狙った獲物を手に入れるのだ。    残された時間はあとわずか…もう失敗は許されない。 (SE 森の中から草木をかき分けて現れる少女) 少女 あら、ごきげんよう。狼さん。今日はどちらまで? 狼  うっ…赤ずきん!なぜ、おまえがここに…! 少女 ふふっ、性懲りもなく、今日もおばあさまの家に行くの? 狼  おまえには関係ないだろ…。(後ずさりする) 少女 あらぁ、私に嘘をついたって無駄よ?    こっちには、あなたに仕掛けたGPSと盗聴器があるの。    だから行動も言動も、筒抜けのあっぴろげ!    怪しい動きがあれば、す~ぐ私が飛んできちゃうんだから。 狼  いつのまに!(GPSが体についていないか探そうとする) 少女 …以前、大人のお医者さんごっこをしたときに、    あなたの体を色々といじくらせてもらったわ。 狼  はぁ!?そんなことしたことねぇだろ!    勝手なこと言ってんじゃねぇよ! 少女 あら、御存じないの?ほら、見て?    このスイッチを押すと、ここの小型銃がビッグマグナムに…。 狼  うぉい!嫁入り前の娘が、どこ触ってんだ! 少女 やだぁ。そういうことを言わせちゃうプレイ?    いいわよ、狼さんがそういうつもりなら…(大きく息を吸う)。 狼  (かぶせて)うわー!やめろ!無し、無し、今の無し! 少女 あら、やだ、冗談よ。    そんな大きな図体してるくせに垢BANが怖いだなんて、    意外と可愛いところもあるのね。 狼  (ため息) 少女 …ねぇ、狼さん。教えてちょうだい。    どうして、私がこんなに止めてるのに、    いまだにしつこく、おばあさまを狙っているの? 狼  …うるせぇ。お前には関係ねぇだろ。    俺はもう、こうやって生きていくしかできねぇんだ。 少女 そんなことない!今なら、まだ引き返せるわ! 狼  はっ。そこを、どきな、お嬢ちゃん。    子どものお遊びに付き合ってる暇はない。 少女 …ちっ。ここまで言っても、わからないなんて…!    聞き分けが悪い駄犬には、お仕置きが必要ね?    (刃物を振り回す音) 狼  …はっ(攻撃を避ける)    …言っただろう?生憎、こっちも時間がないんでね。    力づくで通させてもらうぞ、赤ずきん! 少女 ふふふ。狼さんは痛いのと、もっと痛いの。    どちらがお好みかしら? 狼  (死闘の末、少女に組み伏せられている、満身創痍の狼)    くっ…こんな小娘にやられるなんて…。 少女 うふふ。やっと捕まえた。    さぁ、今日こそ、私の質問に答えてもらうわ。 狼  …ふんっ。 少女 ねぇ、どうして狼さんの目はそんなに大きいのに、    私を見てくれないの? 狼  はぁあ? 少女 ねぇ、どうして狼さんの手はそんなに大きいのに、    私を抱き締めてくれないの? 狼  どういうことだ…? 少女 ねぇ、どうして狼さんの口はそんなに大きいのに、    私に愛の言葉をささやいてくれないの? 狼  …。 少女 …んー、答えてくれないなら、体に直接聞いてみましょうね。    お楽しみ☆大人のお医者さんごっこターイム! 狼  …ひぃっ! 少女 おなかをチョキチョキされたくなければ、答えなさい。ほら! 狼  くそっ!俺は熟女が好きなんだよ!    それも超高齢レベルのババアが! 少女 それでうちのおばあさまを? 狼  そうさ、おまえのババアとしっぽりいちゃラブしてたのに、    いつもいつもいいところで現れては、俺達の邪魔をしやがって! 少女 ふーん、そうなんだ?    …じゃあ、お腹チョキチョキしましょうね? 狼  なんでだよ!正直に答えただろ! 少女 だって、私は狼さんのことが、こんなに好きなのにっ! 狼  ぐっ…あぁぁぁ!(悶絶) 少女 狼さんは、私のこと、好きになってくれないんだものっ! 狼  うあぁぁぁぁあ!(悶絶) 少女 とぉーーーりやぁーーーーっ!(内臓を引っ張り出す) 狼  …あ…があぁぁぁぁっぁあ!(悶絶) 少女 わぁー!長ーい!これ縄跳びできちゃうかも!    ぴょーんっ、ぴょーんっ、ぴょーんっ!    やだぁーもぉ、楽しすぎるぅっ! 狼  …ぐぁ…うぅぅ…がはっ…。 少女 えー?狼さん?寝ちゃったのぉ? 狼  …。 少女 んもう!一人で勝手に逝っちゃうなんて、    女の子に嫌われちゃうぞ! 狼  …。 少女 …なーんてね。    ほら、自分で言うのもなんだけど、私、とーっても優しいでしょう?    たとえ私のことを一番に愛してくれなくても、    おばあさまのことを愛していたとしても、    私は大好きな狼さんを、これ以上、悲しませたくなかったの。    だって狼さんは、もしおばあさまに先立たれてしまったら…    すでに愛するおばあさまは、孫の手によって殺されていて、    この世に一人、残されてしまったと知ったら…辛いでしょう?    ふふ。大好きだった狼さん、そして罪深いおばあさま。    これからも、私のことを遠い空から見守っていてくださいね。    さ、気を取り直して、次の新しいおもちゃ、探しに行こ。…2つ。
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