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最後尾に並ぼうとした俺の前に、いきなりスタッフが割り込んできた。
「本日は時間の都合により、ここまでとさせて頂きます」
流石の俺からも「大人の余裕」なんてものは吹き飛んでしまった。
手に握った二枚の握手券をスタッフの目の前で振りながら、散々文句を言ってやった。でも、何を言ったところでこいつらがこっちの話なんて聞くはずもない。
俺は、二回どころか一度の握手の機会も与えられなかったのだ。
迂闊と言えば迂闊だった。今日はツアー最終日とあって、会場のキャパも四千人。しかも満席で、昨日までの様に千人規模の会場ではなかった。加えて一番人気の由美ちゃんの列は余裕で五百人を超えている。
握手券はこのツアーでのみ有効だから、このままでは友達と遊ぶのを我慢してまで手に入れた握手券が無駄になってしまう。
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