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俺が待っている間、俺の後ろに並ぶウィケッターはいなかった。CDを複数枚買っているのは俺だけだは無いと思うが、多分そいつらは昨日までのツアーで一枚残して使ってしまったのだろう。
「それでは、中へどうぞ」
いよいよ俺の番が来た。その後も結局俺の後ろには誰も来なかったから、俺で最後になる。これで終わりと知ったらmayaは哀しむかな、などと心配しながら中に入った。後ろからスタッフが「この人で最後で~す」などと、余計な事を言う。いや、言わなければならないのか。
他のアイドルグループは知らないが、下り坂は握手券を直接メンバーに手渡してからの握手だと、入り口のスタッフに言われた。俺はmayaにぎこちなく一礼すると、恐る恐る握手券を両手で差し出した。
「うわあ、ありがとう。貴方とは初めての握手ですね」
思っていたのとはまるっきり違っていた。もっとこう、塩対応をされると思っていたのに、その声はとても弾んでいて、そして‥‥‥めちゃくちゃカワイイ!!
声といい、表情といい、これがあのmayaなのか?イメージがガラガラと崩れ落ちた。いや、ホワホワと構築されたと言った方がいいのか。
しかも、俺が握手に来るのを「初めての」とまで言い切った。これはつまり、過去に来てくれたファンを一人一人憶えてくれているという事の証明だ。
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