本命は握手会

7/13
前へ
/15ページ
次へ
 mayaは握手券を受け取ると、それをテーブルの脇にそっと置いて両手を差し出した。俺は緊張と意外な展開に面食らった事で、硬直してしまっていた。 「あ、あの、握手しないの?」  小首を傾げて、それでいて真っ直ぐに俺を見るその表情に、完全にやられてしまった。全身がカーッと熱くなり、めまいすら憶えた。  頭がくらくらして少し記憶が飛んでしまう程だったが、その手の柔らかな感触だけはしっかりと脳裏に焼き付いた。気が付くと俺は出口に向かっていて、一度振り向くと、mayaはいつまでも俺に手を振ってくれていた。その笑顔にまたもや射抜かれた。  テントを出ると、俺は少しだけ冷静になった。まだ心臓は痛い位に高鳴っているけど、あれが営業スマイルだったら恐ろしい人だ、などと考えていた。  それでもいい意味でショックを受けた俺は、しばらくそこから動けずにぼーっと突っ立っていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加