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34 花が咲く②
一年ぶりに、怜央の家の前に立つ。
インターホンを押そうとする自分の指がかすかに震えているが、見て見ぬふりをして、指に力を込めた。
変なところで直情的な自分のせいで、これまで数えきれないほど後悔してきたけれど。
今回ばかりは、きっといい結果になると信じていた。
ドアを開けたのは怜央だった。
瞬間、三年という長い時間が融解していく。
「……久しぶり」
僕の方から口を開く。
「うん。久しぶり。会えてよかった」
「……ごめん、連絡返さなくて」
「いいよ。いつかまた会えるって思ってたし。それにそうやって距離を置いて冷静になろうとするのも、晃らしいなって思ったから。怒ってないよ、全然」
やはり怜央は、僕が自分で嫌だと思っているところを、肯定的に受け入れてくれる。
でももう、それに甘えるのは終わりにしなければならない。
「俺、一人になって自分と向き合った気になったけど、ただ問題から目を逸らしてただけだったんだ。この世界に自分一人だったら、先には進めないけど、誰かを傷つけたり、傷つけられたりしないと思った。でもこの世界に一人になんかなれないんだって気が付いた」
家の中から出てきた怜央は当然、薄着だった。そのことに急に気が付いて、また自分の言いたいことばかり言ってしまった自分を反省しながら、「ごめん、寒いよな」と声をかける。
「中入る? でも俺、晃に見せたいものあるんだよね。自分の家に置いてきちゃったんだけど……行く?」
ほとんど考えず、行く、と頷いていた。
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